出版社内容情報
溝口健二、小津安二郎、成瀬巳喜男、山中貞雄から、鈴木清順、吉田喜重、中島貞夫、そして北野武、黒沢清、濱口竜介まで……。四〇年にわたる論稿を編纂した、著者初の日本映画論集成。単著未収録作を多数含む圧巻の三〇篇に加え、書下ろしの「内田吐夢論」、三宅唱との対談、小田香・小森はるかとの鼎談を収める。
【目次】
「日本映画」のために――序文に代えて
Ⅰ
内田吐夢論――またはその画面を彩る慎ましい顕在性をめぐって
翳りゆく時間のなかで――溝口健二『近松物語』論
言葉の力――溝口健二『残菊物語』論
山中貞雄論
まだ十五歳でしかない彼女の伏し目がちなクローズアップの途方もない美しさについて
――山中貞雄『河内山宗俊』論
「例外」の例外的な擁護――小津安二郎『東京物語』論
二〇〇五年の成瀬巳喜男
寡黙なるものの雄弁――戦後の成瀬巳喜男
Ⅱ
鈴木清順または季節の不在
『悪太郎』讃
神代辰巳を擁護する
影とフィクション
――吉田喜重論 『人間の約束』『嵐が丘』『鏡の女たち』をめぐって
祈りと懇願――澤井信一郎論
京都は、なぜ、「犯罪都市」たりそびれたか
――中島貞夫『893愚連隊』から深作欣二『仁義なき戦い』まで
『893愚連隊』、『狂った野獣』――とりわけ推奨したい二本の活劇
ひたむきに釣瓶を握る女の有無をいわせぬ美しさについて
――中島貞夫『多十郎殉愛記』論
Ⅲ
大震災で映画と出会った男――プロデューサー城戸四郎
「撮影所システム」の消長と「新しさ」の系譜Ⅰ
黒澤明の八月十五日
「撮影所システム」の消長と「新しさ」の系譜Ⅱ
そこに大地震がやってきた
――溝口、山中、そして京都ヌーヴェルヴァーグ
「撮影所システム」の消長と「新しさ」の系譜Ⅲ
一九六〇年、誰が映画を恐れていたか
Ⅳ
北野武、または「神出鬼没」の孤児
空間の悲劇――黒沢清『クリーピー 偽りの隣人』論
聡子の変貌に世界は救われる――黒沢清『スパイの妻』論
沈黙から銃声へ――黒沢清『Cloud クラウド』論
選ぶことの苛酷さについて――濱口竜介『寝ても覚めても』論
Ⅴ
突き詰めた「清順美学」
喜重さんは「驚かせる」ことが得意な方だった
翳りと艶めかしさと
小川紳介の乾いた「殺気」について
アルコールランプの揺らめく炎とともに――追悼 山根貞男
青山真治をみだりに追悼せずにおくために
対談 悦ばしき映画――三宅唱・蓮?實重?
鼎談 “生きている現在”を撮る――小田香・小森はるか・蓮?實重?
初出一覧