内容説明
ある夜、私のアパートに犬がいた。不可解な生活は唐突にはじまった―。『体の贈り物』の著者の幻想に浸された、ある「愛」の物語。
目次
犬―神の内在について
身体―貞節について
家庭―忠実さについて
骨―慈善について
ずきん―忍苦について
闇―思い遣りについて
奇跡―気前よさについて
穴―正義について
母―貧乏について
杯―節制について
天使―洞察力について
猟犬―用心について
召使―謙虚さについて
ガラス―慎重さについて
女の子―信仰について
心―義について
傷―悔悟について
夜―服従について
家族―勇気について
食べ物―改悛について
金槌―慈悲について
道路―忍耐について
川―恩寵について
園―救いについて
子供―慰めについて
著者等紹介
ブラウン,レベッカ[ブラウン,レベッカ][Brown,Rebecca]
1956年米国生まれ。作家。『体の贈り物』でラムダ文学賞、ボストン書評家賞、太平洋岸北西地区書店連合賞受賞。シアトル在住
柴田元幸[シバタモトユキ]
1954年東京生まれ。東京大学教授。英米文学翻訳家(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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NAO
66
【戌年に犬の本】副題「現代の動物寓話集」。もともと動物寓話集とは、動物の行動を寓話的に描き、そこにキリスト教的な道徳観を示したものだが、『犬たち』も、れぞれの章に道徳的な副題がつけられている。だが、その内容は、副題と合致するものなのかどうかどうか首をかしげたくなるようなものばかり。第1章は「犬 神の存在について」という副題だが、「犬」は主人公にとっての神だったのだろうか。それとも、彼女の中にうごめく「何か」なのか。主人公の心の中の深い闇が見えるような、何とも薄気味の悪い話だった。2018/02/25
キムチ
48
名前だけは知っていたけれど、彼女の世界に触れ、何とも言い難い幻想の世界を漂った。柴田さんの訳なら読みやすいかなと思ったのも選択の一因。村上やカミュの香りもないまぜで、だれることなく読めるが、余りにも幻惑的なしなやかさたっぷり。五感をくすぐる文体は一気読みには勿体無い。中世、動物が人々の良き伴侶であった~そういったところから生まれた動物寓話集。ラストに綴られる『川は光の方へ流れていった‥」から始まる箇所がこの作品の内容を昇華している感じ。2017/06/21
たー
22
レベッカ・ブラウンは「家庭の医学」と「体の贈り物」しか読んだことがなかったので、まずそれらとのギャップにびっくりした。とにかく変わった話だなぁと思いつつ読んだ。"Bestiary"(動物寓話)という下敷きがあるということを知った上で読むとちょっとちょっと違ったかもしれない。2014/12/25
tomo*tin
16
私の読み方がおかしいのかもしれない。読み手によっては全然違う顔を持つ物語なのだろうとも思う。そう思いつつも言わずにはおれない。本当にこわかった。恐ろしかった。ページを捲る手が震え、全身で叫びだしそうだった。孤独の闇に埋もれて窒息するかと思った。愛の歪さに胸が押し潰されるかと思った。己が壊されてしまう危機すら感じた。「私」が誰で「犬」が何であるのかさえも次第に分からなくなり、現実と幻想と真実と虚構の境界が崩れてゆくのが見て取れた。物語に侵食された私はこの痛みと恍惚を忘れることができないだろう。2009/05/18
kiho
13
犬との暮らしが意外な展開と視点で語られていく⭐鋭い観察眼に驚き、犬と暮らす日々のある意味、生々しさが存分に伝わってきた。寓話ということは…犬が人であっても…色んな想像が膨らみました♪2015/07/12