出版社内容情報
「おれはもうおじさんではなく、おじいさんだ」――様々な思いをおきざりにして生きてきた長坂誠、65歳。その運命の歯車が或る姉弟との出会いから動き出す。おきざりにされた者など、いない。生きていくかぎり、ささやかでも希望が生まれ、その旅は続いてゆくから。吉田拓郎の名曲にのせて贈る、昭和の香り漂う令和の物語。
内容説明
「おれはもうおじさんではなく、おじいさんだ」―様々な思いをおきざりにして、これまで生きてきた長坂誠、65歳。その運命の歯車が、或る姉弟との出会いから動き出す…。おきざりにされた者など、いない。生きていくかぎり、ささやかではあれ希望が生まれ、その旅は続いてゆくから。吉田拓郎の名曲にのせて贈る、昭和の香り漂う令和の物語。
著者等紹介
原田宗典[ハラダムネノリ]
1959年生まれ。早稲田大学第一文学部卒業。1984年に「おまえと暮らせない」ですばる文学賞佳作(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
感想・レビュー
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starbro
189
原田 マハの実兄、原田 宗典の6年ぶりの新作、懐かしい曲満載の人情噺の良作でした。タイトル「おきざりにした悲しみは」が、吉田 拓郎の曲だとは思いませんでした。 このレビューは、「おきざりにした悲しみは」を聴きながら書きました♪ https://www.youtube.com/watch?v=UxbROQ_JLF8 https://tanemaki.iwanami.co.jp/categories/11022024/12/04
いつでも母さん
134
悲しみなんて置き去りにしていい。抱えたままなら苦しくて息ができない・・身軽になったつもりで生きて行く。そこから何かを掴むかも。掴まなくたって自分の心は知っている。これが自分だと。沢山の悲しみを道連れにしてここまで来た私の琴線に触れる本作。実に好い。『昭和の香り漂う令和の物語』とある。母の「がんばれ誠」にグッと来て、「ほんとうの歌」に不覚にも涙が・・善意とか優しさとかそんな思いが沁みてしみての読後だった。お薦めしたい!2025/02/05
chimako
77
いつも何とか正直に真面目に生きてきた長坂誠65歳。狭いアパートに一人。ここまで両親の離婚に始まり、不運な逮捕や自身の結婚や離婚、順風満帆には程遠い人生だった。そして同じアパートの幼い(中学生と小学生)姉弟との偶然の同居。父親はすでに亡く母親は家を出たきり帰らない。ものを盗むことはいけないことだと教え、温かい食事とシャワーと痒み止めを提供しチームになる。決めつける公務員に辟易しながら読み進めれば昔の付き合いが誠を救う。最後は泣きながらめでたしめでたし。65歳はまだこれから。真子や圭や恵と共に幸せになってね。2025/03/01
Atsushi
57
ひとり暮らしの65歳の男と幼い姉弟の交流を描いた物語。人生のやるせなさや故郷と年老いた両親への想いなど。同年代の主人公には身につまされることも多く共感を覚えた。姉の歌声と弟の書道に舞い降りた小さな奇跡。明るい未来を想像させるラストが印象に残った。いくつになっても青春だ!2024/12/19
えみ
45
おきざりにした悲しみは…優しさによって救われる。おざなりにしない生き方にとても報われた気持ちになった。生きていれば理不尽に心を踏みにじられたり、予想困難なたくさんの障害が立ちふさがる。それでも今できる精一杯の最善を探し、選び、人の為に行動する良き行いはきっとこの世界の誰かの目に留まる。これまでの悲しみはこの日の為にあった。長坂誠、65歳。彼は母親が帰らず、水を止められ腹を空かせた隣室の姉弟と交流を深めたことから今までとは違う明日を見る。吉田拓郎の名曲、「おきざりにした悲しみは」に続く言葉を知ることになる。2025/02/01