出版社内容情報
生産様式から交換様式への移行を告げた『世界史の構造』から一〇年余、交換様式から生まれる「力」を軸に柄谷行人の全思想体系の集大成を示す。戦争と恐慌の危機を絶えず生み出す資本主義の構造と力が明らかに。呪力(A)、権力(B)、資本の力(C)が結合した資本=ネーション=国家を揚棄する「力」(D)はあるのか。
内容説明
『資本論』を引き継ぎ、生産様式から交換様式への移行を告げた『世界史の構造』から一〇年余、交換様式から生まれる「力」を軸に人類史の歩みを再考し、柄谷行人の全思想体系の核心を示す。戦争と恐慌の危機を絶えず生み出す資本主義の構造と力を明らかにし、呪力(A)、権力(B)、資本の力(C)が結合した資本=ネーション=国家を揚棄する「力」(D)を見据える。
目次
第1部 交換から来る「力」(予備的考察 力とは何か;交換様式Aと力;交換様式Bと力;交換様式Cと力;交換様式Dと力)
第2部 世界史の構造と「力」(ギリシア・ローマ(古典古代)
封建制(ゲルマン)
絶対王政と宗教改革)
第3部 資本主義の科学(経済学批判;資本=ネーション=国家;資本主義の終わり)
第4部 社会主義の科学(社会主義の科学1;社会主義の科学2;社会主義の科学3)
著者等紹介
柄谷行人[カラタニコウジン]
1941年生。思想家(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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壱萬参仟縁
58
E図書館。交換において、物は≪感覚的でありながら超感覚的な物に転化してしまう≫。商品の価値とは、物に付着した何かである。マルクスはフェティシュ(物神)と呼んだ(21頁)。小生は、エミール・デュルケームの社会学で初めて学んだことを想起した。マルクスがフェティシズムについて知ったのは、1842年にシャルル・ド・ブロス『フェティシュ諸神の崇拝』をよんだとき。ド・ブロスが最初に提起したフェティシュ概念。元来、アフリカの護符・呪物崇拝。言語起源は、feticoはラテン語のピジン語(27頁)。カントは世界戦争を予感。2023/05/12
ta_chanko
23
交換様式から世界を観る、柄谷行人の思想の集大成。A贈与と互酬=共同体、B支配と分配=国家、C等価交換=市場。この3つが相互に作用することで、その時代がつくられる。そして時代の危機に瀕したとき、D=交換様式Xが出現する。それは人々が望んで到来するようなものではなく、強迫的に訪れるもの。Aが高次元で回帰したもの。一時的なトレンドで終わるものではなく、パラダイムシフトを引き起こすものになる。CやBが支配的な世界において、自由・平等を回復しつつ危機に対応できるシステム。新たな普遍宗教的な信仰の到来と、行動の転換か2022/12/08
呼戯人
23
否応なく到来する未来としての交換様式Dは、歴史的にはイエスや釈迦、孔子やソクラテスとして現れてきた。それは、終末や徳を論じている人々である。しかし、1848年以降、資本=ネーション=国家の複合体として現れてきた交換様式A=B=Cへの対抗として、社会主義の科学である資本論以降のマルクスやエルンスト・ブロッホの登場によって、交換様式Dの姿がはっきりと現れてきた。「今後に戦争と恐慌、つまりBとCが必然的にもたらす危機が幾度も生じるだろう。しかしそれ故にこそ、Aの高次元での回復としてのDが必ず到来する」2022/11/22
道楽モン
21
柄谷行人から距離を置いたのは90年代初頭。80年代の半ばに『日本近代文学の起源』を読み、その新しい評論スタイルに魅了され、一時は熱狂的な読者となった。中上健次の同志的な伴走者であり、刺激的な文芸評論家と感じた。突然の『マルクス その可能性の中心』も面白く読んだが、経済学や哲学が彼の土俵とも思えず、違和感を感じ、熱は冷めた。で、およそ30年ぶりの再会。スケールが大きくなり考察も深まり、独自の『交換』という視座による展開に感心した。資本主義の次の世界を予感させる渾身の作だが、まだ少し違和感あるなぁ。2023/08/01
hasegawa noboru
20
示される壮大な知の体系を前に「柄谷行人もずいぶん角が取れて、字面を追う限りにおいては、私ごときにも分からぬではない文章を書きなさるようになった」と愚にもつかぬ感想をまず吐くばかりだ。中身についてはカバーそでのコピー文が簡潔にして要を得る。<『世界史の構造』から一〇年余、交換様式から生まれる「力」を軸に人類史を再考し、柄谷行人の全思想体系の核心を示す。戦争と恐慌の危機を絶えず生み出す資本主義の構造と力を明らかにし、呪力(A)、権力(B)、資本の力(C)が結合した資本=ネーション=国家を揚棄する「力」(D)を2023/09/15