出版社内容情報
ローマ帝国では「悪帝」とみなされた皇帝にまつわる記録や彫刻の削除・改変が、広く行われていた。ダムナティオ・メモリアエと呼ばれるそうした記憶抹消行為は、なぜ、どのようにして行われたのか。文献史料の記述と碑文や彫像等に残された攻撃の痕跡を元に綿密に論じる。現代にも示唆を与える、記憶をめぐる古代史。
内容説明
ローマ帝国では「悪帝」とみなされた皇帝にまつわる記録や彫像の削除・改変が、その死後に広く行われていた。「ダムナティオ・メモリアエ」と呼ばれるそうした記憶の破壊行為は、なぜ、どのようにして行われたのか。文献史料の記述と碑文や彫像等に残された攻撃の痕跡を元に綿密に論じる。現代にも示唆を与える、記憶をめぐる古代史。
目次
序論
第1章 カリグラの記憶と記録
第2章 「国家の敵」ネロとメモリアへの攻撃
第3章 ドミティアヌスと「悪帝」のメモリア
第4章 コンモドゥスと翻弄される皇帝のメモリア
第5章 セウェルス朝期のメモリアへの攻撃とその変容
結論
著者等紹介
福山佑子[フクヤマユウコ]
1983年、岡山生まれ。早稲田大学第一文学部卒業。同大学大学院文学研究科博士後期課程にて博士(文学)を取得。日本学術振興会特別研究員PDを経て、早稲田大学国際教養学部講師(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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jntdsn13
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damnatio memoriaeは「悪帝」とされた皇帝を碑文等から抹消する刑法的処分という漠とした知識があったのみだったが、そのようなモムゼンらによる定式化に対し、本書は時代と皇帝ごとにもう少し立ち入って検討する。そもそも悪帝のメモリアの破壊が慣習として既存し、その徐々な定式化、必ずしも徹底しないこと、政治的による弾劾と復権の往復、大きな背景には碑文などによる顕彰を重要視するローマ文化ともに隆盛し、その衰退と大理石の採掘停止=リサイクルとともに消えていく等。文体と章頭の解説など構成も全体的に読みやすい。2021/09/16