出版社内容情報
「総理、芦部信喜さんという憲法学者、ご存じですか」「私は存じ上げておりません」(国会答弁より)。戦後憲法学のスタンダードをつくったのは、どんな人物だったのか。学徒出陣の戦争体験。実際の裁判にも関与し、後半生を懸け「憲法訴訟論」を開拓するまで。独自入手した資料を交え、その足跡を再現する。識者一三名のインタビューも収録。
内容説明
戦後を代表する憲法学者、その「人と学問」の根底に何があったのか。学徒出陣の戦争体験。実際の裁判にも関与し、半生を懸け「憲法訴訟論」を開拓するまで。独自入手した資料を交え、その足跡を再現する。信濃毎日新聞連載の本格評伝(第二五回平和・協同ジャーナリスト基金賞奨励賞受賞)、待望の書籍化。ゆかりの識者一三名のインタビューも収録。
目次
第1章 源流 伊那谷から
第2章 憲法改正と自衛隊
第3章 人権と自由
第4章 国家と宗教
第5章 象徴天皇制とは何か
第6章 インタビュー 芦部憲法学から現代を問う
番外編 二つのスクープ
著者等紹介
渡辺秀樹[ワタナベヒデキ]
長野県駒ヶ根市生まれ。伊那北高校、早稲田大学第一文学部。1983年、信濃毎日新聞社入社。報道部長、編集局次長、論説副主幹などを経て、2018年から編集委員(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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おさむ
28
改憲を目指していた安倍首相が名前を知らなかったとして、バカにされた事で知られる芦部信喜。そんな私も、日本を代表する憲法学者くらいの知識しかなかったのでバカにできない。信濃毎日新聞の編集委員がまとめた本著は芦部氏の生涯と様々な功績をバランスよく紹介する良書。法の解釈にとどまらず、現実の法のあり方も追求する姿勢はもっと最近の学者にも見習ってもらいたい。立法事実論や憲法改正限界論、中曽根康弘首相の靖国参拝の諮問懇談会で違憲性を指摘した、目的効果基準など法学部出身者にとっては色々と興味深いテーマが多かった。2021/02/28
nagoyan
14
優。実に面白かった。本書は、信濃毎日新聞に掲載された記事を書籍化したもの。戦後憲法学を牽引した芦部の為人とその学問的業績が、いかに時々の社会問題に関わっていたかを記す。芦部の業績は、学問的に優れているという点だけでなく、現実の司法に影響を与えてきた。その多くは、芦部の描いたようにはならなかったかもしれないが、少なくとも、私たちにとって、最高裁の姿勢を客観的に検討する視点と基準を手に入れることを可能にしたという功績が残ったように、僕には思えた。白眉は第4章と附録。無念のほどが偲ばれる。2021/01/24
seki
12
学生の頃、色々な憲法の本を試したが、一番しっくりきたのが、芦部先生の「憲法」。その理由が本書で少し分かった気がする。学術論になりがちな憲法解釈だが、芦部先生のそれはどこか人間くさい。憲法があって、人間がいるのではなく、人間があって、憲法がある。そんなところだろうか。芦部先生の憲法論の背景は、戦時中の悲惨な体験に基づくらしい。そう考えると、芦部先生は憲法と同じ時代を生きてきた。21世紀を迎える前にお亡くなりになったのが残念。願わくば今の時代をどう読むか聞いてみたかった。2021/04/04
クサバナリスト
9
芦部さんがこれほど重大裁判に関わっていたのか知らなかった。 私が学生時代、読んでたのは佐藤功『日本国憲法概説』と佐藤幸治『憲法』。芦部さんの『憲法』の出版は卒業後のため読んだことない。そのうち読んでみたい。2021/04/03
べんぞう
1
憲法判例は一通り押さえてあるし,芦部教授の本は一通り読んであるので,若干退屈な本ではあった。違憲審査基準や憲法訴訟についての概説,芦部教授の生涯についての記述を期待したが,そのような記載ばかりではない。著者の政治的思想が強く出ていた感。新聞連載なのでやむを得ないが…。2022/05/02
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