出版社内容情報
「人の苦悶はみな自分のものだから」──絶滅収容所から生還し『これが人間か』『休戦』を書いた作家は、生前一冊の詩集を遺した。生き残ることの罪悪感を抱えながら、世界に溢れる苦しみに心寄せうたう。存在をゆさぶる94篇。
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
燃えつきた棒
32
今回も読書ノートとして記す。 プリーモ・レーヴィは、1919年イタリアのトリノ生まれ、43年ドイツ軍占領下でパルチザンに参加して捕らえられ、44年アウシュヴィッツに送られる。45年に開放され、ソ連各地を転々とした後帰国。強制収容所体験を主題とした小説を発表して作家となる。87年に自死。/2023/09/20
ロビン
21
アウシュヴィッツでの体験を書き記した名著『これが人間か』で知られるプリーモ・レーヴィの詩集。最後には自死を選んだこの詩人の紡ぐ詩群はやはりどこかペシミスティックでアウシュヴィッツの影を感じる作品が多いが、動植物を歌ったユーモアと共感に溢れた作品もあり、読後感は不思議と暗くはなかった。それはレーヴィが詩の意味を読み手に伝達することを重視し、エルメティズモ(錬金術派)の手法を取らなかった姿勢や、詩の中に込められたヒューマニズムのおかげかもしれない。ハイネがお気に入りだったというのもむべなるかなと思う。2020/07/08
きゅー
14
彼の書いた詩は難解なものではない。(彼がパウル・ツェランの詩作について否定的な考えを持っていたというのは、非常に納得させられる。)だからといって、詩そのものを読むだけでは理解の深度はある一定ラインを超えない。しかし、本作では訳者の竹山博英氏がすべての詩の解説を掲載しているので、一度先入観なしに詩を読み、再度解説を参照しつつ詩を読み通すことで、詩そのものだけではなく、彼の人生を読み直すことが出来た。これらの詩の中には、レーヴィが散文では決して書かず、一生隠してきた部分についても書かれている。2021/03/24
圓子
7
期待通り、詩もよいのであった。渦巻く現実を昇華する力をとてつもなく感じる。どうしてこの人が自死を選んだの?(おそらく)と、読むたび思わずにはいられないのだけど、そう言いつつもなんとなくわかるような気もしている。今(2020年4月)みたいなときに、元気で明るいものに触れると逆に気が滅入る方にはレ―ヴィの著作を推薦します。アウシュヴィッツものはさすがに重いから、『周期律』か『天使の蝶』がいいかな。2020/04/05
刳森伸一
6
アウシュビッツ収容所からの帰還者にして化学者兼作家のプリーモ・レーヴィが生涯に認めた詩を集めた詩集。その数は決して多くはないが、アウシュビッツ収容所に収容される前から死の前までの長い期間にわたって書かれている。時にユーモアで笑わせる小説とは異なり、レーヴィの詩の基調はアウシュビッツの影によって暗く、アウシュビッツでの日々がトラウマとなって残り続けているのがよく分かる。本書の詩は峠三吉の『原爆詩集』にも似て切実で、その突き付けてくるメッセージを深く胸に刻み込まなければならないものだと思う。2019/10/06