感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
松本直哉
31
カトリック教会の禁書目録に入れられたことからもわかるように、至上の愛を貫く一組の男女の物語というにとどまらず、大革命直前のフランスの田園地方における貴族や教会の横暴と腐敗を容赦なくえぐりだした文明批判の書でもある。教会と喧嘩して飛び出した神父や、無知無教養にもかかわらず高い見識をもつ隠者、机の上の書物からではなく世間という書物から学ぶ男などの脇役が魅力的。荒々しい自然人の主人公モープラが、文明との軋轢を通して試行錯誤しつつ成長するようすは、ジャン=ジャック・ルソーにおける無垢な自然人を思い出させる。2022/01/27