出版社内容情報
どん底の境遇から思想を獲得し,国家と対決した金子文子.武闘派サフラジェット,エミリー・デイヴィソン.イースター蜂起のスナイパー,マーガレット・スキニダー.百年前の女たちを甦らせ未来へ解き放つ,三つ巴伝記エッセイ!
内容説明
無戸籍、虐待、貧困―どん底の境遇で育つなか、体で思想を獲得し、国家と対決した金子文子(1903‐1926)。マッドで過激な武闘派サフラジェット(イングランド女性参政権活動家)、エミリー・デイヴィソン(1872‐1913)。アイルランド独立を求めたイースター蜂起の凄腕スナイパー、マーガレット・スキニダー(1892‐1971)。道徳や恋愛の呪縛を超え、全力で生き、闘った、彼女たちが甦る。
目次
女たちのテロル
ガールズ・コーリング―あとがきに代えて
著者等紹介
ブレイディみかこ[ブレイディミカコ]
ライター。1965年福岡市生まれ。96年から英国ブライトン在住。著書に『子どもたちの階級闘争―ブロークン・ブリテンの無料託児所から』(みすず書房、第16回新潮ドキュメント賞受賞)等(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ヴェネツィア
443
本書を読むまでは全くその存在さえ知らなかった金子文子。およそ100年前の人である。出生時には戸籍もなく、親に捨てられ、祖母の虐待を受け、13歳の時には自殺の寸前にかろうじて踏みとどまった。そこからの彼女は徹底した「自立」の道を歩むことになる。思想的にはアナーキスト(彼女自身はそうしたカテゴライズを嫌う)であり、「実存」を自ら確立していった。行動的にはテロリストでもあった。天皇と皇太子に爆弾を投げつけることを企図したことによって起訴され、最後は獄死(自死)するといった凄まじいばかりの生涯であった。2020/05/29
ケンイチミズバ
131
革命など起こしても権力が別の権力に入れ替わるだけ。民衆はまた支配されるだけ。ロシアがソビエトになりロシアに戻る。共産主義、社会主義も失敗。資本主義も今は疑わしい。主義は全部ダメじゃんファック・オフ!女性が自分の人生を生きることができなかった百年前、女は物だった。金持ちの嫁にするか女中という労働力にするか、家長の男が決めた。素直に従うことが「道徳」だった。富者と貧者、男と女、親と子、支配関係があるところに道徳は利用され階級を維持するのにも使われた。国が美化するもんにろくなものがないと立ち上がった女性の記録。2019/10/01
読特
85
英国支配からの独立のため、女性参政権のため、自分自身を生きるため。日英愛。壮絶に生き、そして戦った100年前の女性たち。恩赦・釈放・帰国許可。当時の社会もそれなりに寛容だった。しかし、彼女たちはそれでよしとしなかった。3つの物語は交互に進む。歴史上無関係な出来事が近づいていく。願いは成就しなかった。イースター蜂起は失敗し、女性参政権はサフラジェットでは叶わず戦争がもたらした。金子文子は23歳で逝く。忖度しない、先の展開を憂いしない。無謀な自己犠牲は直情の赴くまま。「生き物の死にざま」は後生を残すために。2023/04/18
NAO
83
大逆事件の共犯者として逮捕され、拘置所内で自殺した金子文子。イギリスの女性参政権獲得運動家の中でも過激でマッドエミリーと呼ばれ、ダービーで皇太子の馬の前に立ちはだかったエミリー・ディヴィソン。アイルランド独立運動に参加したクールなスナイパー、マーガレット・スキニダー。百年前、自分の主張を通すために命をかけた三人の女性たち。「手足まで不自由なりとも死ぬといふ只意志あらば死は自由なり」という短歌を詠んだ金子文子の強さ、聡明さ。彼女が普通の家に生まれていたなら、違った意味で歴史に名を残す人物になっていたかも。2019/11/14
どんぐり
82
大逆罪で有罪となり獄中死した大正期日本のアナキスト金子文子(1903-1926)、競馬場のダービーで国王の馬の前に飛び出して命を落としたサフジェット(イングランド女性参政権活動家)のエミリー・デイヴィソン(1872-1913)、アイルランド独立を求めスナイパーとして戦ったマーガレット・スキニダー(1892-1971)の3人の評伝。いずれも国家に抗って闘った女性で、著者のトリッキーな文体(多分に意図的)とともに紹介されている。こういう女性がいたんだという意味で感心して読んだ。なかでもエミリーについては、映画2019/10/17
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