出版社内容情報
「食べちゃいたいほど、可愛い。」あられもない愛の言葉は、〈内なる野生〉の呼び声か。食べる/交わる/殺すことに埋もれた不可思議な繋がりとは何なのか。近代を超え、いのちの根源との遭遇をめざす、しなやかにして大胆な知の試み。
内容説明
「食べちゃいたいほど、可愛い。」このあられもない愛の言葉は、“内なる野生”の呼び声なのか。食べる/交わる/殺すことに埋もれた不可思議な繋がりとは何なのか。近代を超え、人間の深淵に向かい、いのちの根源との遭遇をめざす、しなやかにして大胆な知の試み。
目次
序章 内なる野生
第2章 異類婚姻譚
第3章 食と性と暴力と
第4章 動物をめぐる問題系
第5章 はじまりの神話
第6章 女神の死
第7章 大いなる口
第8章 生け贄譚
終章 愛の倒錯
著者等紹介
赤坂憲雄[アカサカノリオ]
民俗学・日本文化論。学習院大学教授。福島県立博物館館長。東京大学文学部卒業。東北芸術工科大学教授として東北文化研究センターを設立し、『東北学』を創刊。2007年『岡本太郎の見た日本』(岩波書店)でドゥマゴ文学賞受賞、同書で芸術選奨文部科学大臣賞(評論等部門)受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
starbro
147
朝日新聞の書評で興味を持ち、図書館に予約して読みました。赤坂憲雄、初読です。学者らしく、古今東西の民族伝承、寓話等を通じて『性食』を真面目に考察しています。著者同様、宮沢賢治の性教育講座は受けてみたかった。「食べちゃいたいほど可愛い」娘とつきあってみたいなぁ。今回は高尚な【読メエロ部】でした。2017/12/22
キク
71
「食べちゃいたいほど、可愛い」食べることと、愛することや交わることのあいだには、不可思議な関係が埋もれている。それはひそかに、しかし、あきらかに、だれもが気づいていることではなかったか?下品になりかねない命題だが、学習院大学教授である著者は、古事記、日本書紀などの古典、折口信夫や柳田国夫の著作等から引用して民俗学的に掘り下げていく。東日本大震災の夏、三陸の魚を捌くと人の歯が出てきたという噂が流れた時、地元の漁師は「だから、食うんだろうよ」と言った。宮沢賢治を産んだ東北の地には、確かに独自な生命の思想がある2023/03/05
やいっち
70
著者は、民俗学・日本文化論の専門家で、東北文化研究センターを設立し,『東北学』を創刊された方。民俗学関連の本は少しは読んできたが著者は多分初めて。実は書店で表紙(カバー)に惹かれて手に取った。筆者は自ら絵を選んだとか。鴻池朋子氏の作品。2021/04/20
honyomuhito
44
食べること、交わること、殺すことの因果関係について民族学、日本文化論学者が数多くの文献を元に述べる。どの内容について語っても何かに障ってしまいそうなタブーの塊のような内容だ。宮沢賢治は菜食主義者で童貞で病のため兵役免除されていたため、食と性と暴力から猶予された存在として、世界の隠された現実を視る人として「注文の多い料理店」「蜘蛛となめくじと狸」「なめとこ山の熊」など数多くの作品を作れたのだという意見は興味深かった。民俗学者は妄想力が強くないと出来ないなとも思いながら読了。2018/04/29
ゆう
43
感想を文字数内におさめられる気がしない。「食べちゃいたいほど、可愛い」この表現が、世界中である程度の共感をもって受け入れられるのは何故なのか。その時、私たちは食べるという行為と、愛するという行為の間に、どのような親和性を見出しているのか。そんなシンプルな問いは、やがて人類の記憶の根源、神話や民話の世界へと読者を誘う。そしてどうやらそこには、ある種の暴力の世界があるらしい。自分の中にも存在する、人類が抱え込んだ矛盾。その深淵さを覗き見するような、スリルある論旨の展開にぞくぞくしながら読み進めた。2020/03/29