内容説明
領土紛争、国際テロ、国境を越えて広がる伝染病の脅威や地球環境問題など、「境界」はわれわれの生活を意味づけ、絶えず様々な課題を突きつける。政治学や国際法、社会学、人類学など、“境界”にまつわる様々な“知”を巻き込んで発展しつつある新しい学問領域、ボーダースタディーズのわかりやすい入門書。
目次
第1章 世界は境界だらけ
第2章 古代の境界と領域
第3章 近代の国家システム
第4章 境界を引く
第5章 境界を越える
第6章 境界を越える制度とシステム
エピローグ 境界に満ちた将来
著者等紹介
ディーナー,アレクサンダー・C.[ディーナー,アレクサンダーC.] [Diener,Alexander C.]
カンザス大学准教授。政治地理学、国際関係論、境界研究
ヘーガン,ジョシュア[ヘーガン,ジョシュア] [Hagen,Joshua]
マーシャル大学教授。地理学、都市計画、境界研究
川久保文紀[カワクボフミノリ]
1973年福島県生まれ。中央学院大学法学部准教授。現代政治学、国際関係論、境界研究
岩下明裕[イワシタアキヒロ]
1962年熊本県生まれ。北海道大学スラブ・ユーラシア研究センター教授。国際関係論、国境学。著書に『北方領土問題』(大佛次郎論壇賞、中公新書、2005年)(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
壱萬参仟縁
28
領域性:人間が個別に、社会的、政治的な実体を通じて、地理的空間を作り出し、伝達し、支配する手段(6頁)。主権:特定の領域、およびそれに付随する住民や資源に対する至高の正当性と実効性の行使(9頁)。グローバル化:あるアイデンティティを特定地域から徐々に分離。人と場所の間に長期に見られた結び付きに脅威を与えている(79頁)。国境と国境地域:国家のセキュリタイゼ―ションの象徴としても機能(88頁)。偶発的な主権:国民国家システムの移ろいやすさを例示(94頁)。2015/07/21
お抹茶
2
古代から現代の国家と国境の関係を記す。中世のドイツでは都市は個別に行動する力を持たず,貴族に対する自らの利益を守るために都市同盟を結んだ。脱中央集権的で都市の壁を越えた曖昧な境界を特徴とする,散在した都市の連合体だった。フランスの王と都市の商人階級は貴族に対抗するため,比較的明確な国境と中央集権的な対内主権による領域国家を出現させた。アウクスブルクの和議とウェストファリア条約により,自律的な主権による正確な境界が定められた。宗教君主的な主権から国民領域的な主権への移行は,民主主義と領域の関係を強固にした。2019/01/01
sayan
0
仕事に関係するも、なかなか読み始めにいたらなかった書籍。抽象的な内容を理解するには、集中力が必要なので一気に読みたい、という言い訳でずるずると。古くて新しい議論だが、p.85国境(境界)が、安全と機会の双方に大きく影響する論点は現在のコンテクストに照らし合わせて改めて新鮮。特にセキュリタイゼーションに関わる議論は、土佐弘之、またBigo Didierのバノプティコン(フーコーのパノプティコンとは異なる)理解に繋がる。ランシエールはこのあたりを更に抽象化し非常に示唆に富む。改めて歓待の条件カント理解が必要。2016/06/27