内容説明
いま、被災地はどうなっているか―。宮城・岩手、そして福島。被災地で起きている「上から・外から」の「創造的復興」。民営化、特区、第一次産業への企業参入、大規模店舗の進出など、震災を「千載一遇の機会」として、公共が襲撃されている。「社会実験」にさらされる被災地を、地を這う取材で報告する。
目次
第1章 被災地の遺伝子研究
第2章 二〇年前の創造的復興
第3章 迷走する復興予算―誰が復興を構想したのか
第4章 社会実験にかけられる被災地
第5章 協同ですすめる復旧復興
第6章 仙台空港民営化―見失われる着地点
第7章 被災地カジノ狂騒曲
第8章 イオンが被災地にやってきた
第9章 社会的共通資本としての商店街―「まち」と「消費地」
著者等紹介
古川美穂[フルカワミホ]
1965年、神奈川県生まれ。フリージャーナリスト。女性誌でライターとして依存症問題などを取材(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
よこしま
46
被災者を無視した利権のみの復興。◆読友さんのレビューに関心を持ち、読んでみました。惨事便乗型資本主義。「民間活用」を謳う宮城県・村井知事と、「答えは現場にある」の岩手県・達増知事が対極的なのが明確です。◆まず怖いのが東北メディカル・メガバンク。被災者という弱い立場を利用し、遺伝子の研究をするのは倫理的問題では。東北大学に東芝やドコモなどが。また、水産特区や宮城空港民営化とカジノ案。東北の顔となると宮城なのか、中央官庁の意向が強く感じてしまいます。◆福島についての内容が薄いのが少し複雑な想い。2015/09/12
壱萬弐仟縁
36
被災者は社会的弱者ではない(36頁~)。メディカル・メガバンク構想で、心配されるのは、栗原千絵子氏によると、地域特有のゲノム情報が特定され、その結果が被災住民の移動に伴う外的要因がもたらす結果と混同される間違った地域スティグマにつながる危険性(43頁)。高速バスの派遣ドライバーが大惨事を引き起こしたように、LCCは1日5回、6回も離着陸を強いられ、夜チェックイン、翌朝常務も常態化しつつあるという(105頁)。これでは乗客は安かろう悪かろうだが、生きた心地がしない。2015/12/01
おさむ
22
月刊誌「世界」の連載をまとめたもの。米国の著名な経済学者ミルトン・フリードマンが唱えた危機的状況を活用した経済・社会構造改革(=ショック・ドクトリン、なお批判的な名付け親はナオミ・クラインですよ、念のため)がいま、東日本大震災の被災地・東北で展開されているという主張。確かに東北メディカル・メガバンク構想や復興カジノ構想、仙台空港の民活などはそう思いますが、後半のイオンの進出は同じカテゴリーに入れていいのかな、という疑問はすこしわきました。復興は決してトップダウンではなく、ボトムダウンで進めるべきですね。2015/05/22
coolflat
16
岩手と宮城の復興を対比。岩手の復興が現場からのボトムアップ型に対し、宮城の復興は大規模事業や企業誘致によるトップダウン型、もっと言えば「シンクタンクに乗っ取られたショックドクトリン型」なのだと。これほどの両県の際立つ違いは、達増岩手県知事、村井宮城県知事という個人的資質によるものが大きいと感じた。岩手県知事選という時節柄、達増知事のよさを再確認(対比としての村井知事の酷さ)しておくのにうってつけの本だろう。因みに題名は“東北”ショックドクトリンだが、“宮城”ドクトリンといっていいくらい、宮城の酷さが際立つ2015/08/18
スイ
13
『大災害の混乱に紛れ、これまで実現が難しかった大規模な改革を一気に推し進める。ーーまさしくこれは、典型的なショック・ドクトリン、惨事便乗型資本主義ではないか。』 明晰な文章で、内容も整理されているのでとても読みやすい。 にも関わらず、度々、少しの中断を置かなければ読み進められなかった。 たまらない気持ちになって。 あれだけの災害に見舞われた土地の人たちにあれこれとつけ込む、そんなことよくできるよ…良心とかないのかよ…。 しかし、弱い立場にある人を利用する、こんなことがまかり通っているのには、私にだって2020/07/07