内容説明
ジェロニモの末裔たちはアメリカの岸辺から世界へと流れていった“叛アメリカ”とは現代社会が無自覚に追随する自己崩壊のシステムへの根源的な異議申し立てである。キューバからハワイ、沖縄、フィリピンまで。時空間を超えて群島状に拡がった叛乱者たちの系譜を「いま」に呼び出す知的冒険の書。
目次
1 アメリカ、大いなるカオスの岸辺
2 グアンタナモ、死との舞踏
3 ハイチ、トゥサンの島への帰還
4 テニアン、破局的寓意の島
5 オセアニア、小ささの神話
6 長崎・沖縄・キューバ、写真群島の対位法
7 チリ九・一一、詩のジェノサイドに抗して
8 ブラジル、筏舟の黒いジェロニモ
9 フィリピーナス、記憶の私‐群島
10 ジェロニモたちの方舟
著者等紹介
今福龍太[イマフクリュウタ]
1955年東京生。文化人類学者・批評家。東京外国語大学大学院教授。1980年代初頭よりメキシコ、キューバ、ブラジル、アメリカ南西部に滞在し調査研究に従事。サンパウロ大学、サンパウロ・カトリック大学などで客員教授を歴任。2002年より奄美群島において巡礼型の野外学舎「奄美自由大学」を主宰(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
踊る猫
24
理論でコチコチに固まった本ではない。むしろ逆に、ロジックを生真面目に詰めすぎることで身動きが取れなくなるリスクを避けるように(=「逃走」?)、スリリングに論旨を飛ばして文章を展開させる。オバマ政権以後のアメリカをめぐる論述はそのまま時代を超え、ジャンルを越境して様々な詩人や文学者や政治家の足取りへと移行する。この華麗さはややもすると「いい加減」とも取れてしまうので厄介だが、ぼくはこの華麗さを支持したい。まだアメリカが「帝国」だった頃の政治観を引きずっていないかと気にならなくもないが、しかし読ませる本である2020/08/26
壱萬弐仟縁
23
11年初出。非正統的で対抗的・攪乱的な歴史の動因を叛史ととらえた(ⅳ頁)。涙の道:チェロキー・インディアンの強制移住の過酷な道程をさす一般的な呼称として定着した用語(9頁)。ジャック・クルシルの《涙の道》:歴史が大地に暴力として刻印された経路を明るみにだし、同時に歴史の背後でひっそりと生まれていた知の痕跡や踏み跡を探り当てる(11頁)。2015/06/21
yone
2
実はもう随分前だが、この著者のクレオール主義を途中で挫折している。本屋でこの本を見かけ、その事を思い出しつつも、ハワイ、チリクーデタなど魅かれる言葉を見て購入した。予想外にスンナリ興味深く読めた。内容については愚鈍な自分ではうまく言えない。しかし、文章の向こうに何かリズムを感じた。アメリカインディアンの強制移住から始まる旅は、ハワイ、長崎、チリと点描のように、彩られる詩やうたのようだと思う。群島・世界論も読みたい。クレオール主義も再チャレンジしてみよう。2015/02/21