内容説明
「あ」と「い」はどっちが大きい?あるいは、「コジラ」と「コシラ」では?こんな質問をされたら、あなたはどう答えますか。文字そのものには大小がないはずなのに、音で聴くと母語が何であるかにかかわらず大小を判断するそうです。また、五十音図とサンスクリット語との関係、存在しない音を聴いてしまう脳など、楽しい話題を紹介します。
目次
第1章 「マル」と「ミル」はどちらが大きい?―音象徴
第2章 「あかさたな」とサンスクリット研究―音声学のはじまり
第3章 世界中のことばを記録する方法―記述音声学
第4章 音を目で見る―調音音声学
第5章 声紋分析官への道―音響音声学
第6章 ないはずの音が聞こえる日本人―知覚音声学
第7章 社会との接点を目指して―福祉音声学
著者等紹介
川原繁人[カワハラシゲト]
1980年生まれ。2002年国際基督教大学卒。2007年米国マサチューセッツ大学大学院言語学専攻博士課程修了。博士(言語学)。ジョージア大学助教授、ラトガース大学助教授を経て、2013年より慶應義塾大学言語文化研究所准教授。専門は音声学・実験音韻論および一般言語学(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
1 ~ 1件/全1件
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
へくとぱすかる
39
音声学全般を広く、しかし最前線の話題で紹介。なにしろメイドさんの(むろん日本の)発音までフィールド調査してあるのだ! 「日本人はLとRの発音の区別がつかない」ことから始まり、声紋など音の物理、脳でのことばの認知など、実に手広く非常によい入門書。ところで、音の物理と言葉の意味とが、完全には無関係でないことは、言語学にとっては、大きな前提の崩壊にもなりかねないのでは?2015/11/10
Kikuyo
25
濁音は大きく力強い=口の中が広がるから。音から意味の連想が起きるのを音象徴といい、[a]は大きくて[i ]は小さいなど音声学の入門編。音から受ける印象って確かにあるなと思う、その謎が少しとけた。 丁寧な説明で音声学に興味が湧くような語り口になっている。2018/06/27
しゅん
23
「あ」の方が「い」より大きく感じられるのは日本でも欧米でも共通(おそらく全世界共通)している。それには身体運動上の理由がある。本書は、音声学の見地に基づき、「音とことば」の不思議を明かしていく。名前において「男っぽい」「女っぽい」のような印象の違いが生まれる理由や、日本人が「r」と「l」が区別できない理由などを、研究蓄積と音響装置によって解き明かしていく。その論述が簡潔かつスムーズで、読んでいて楽しい。音韻分析の入門的な(面白くて学びの深い)書物を探していたのだが、見つかって非常に嬉しい。2023/01/09
calaf
21
言語を構成する「音」は本来、単なる符号に過ぎない...はずなのですが、実際にはいろいろな印象が乗っかっていることも多いみたいです。「マル」と「ミル」、「ゴジラ」と「コシラ」、「ガンダム」と「カンタム」では、前者の方が大きい印象がある人が多いのでは?これは日本人に限らず人類に共通してみられる傾向であるらしい...というような話 (はしょり過ぎ!笑)2016/02/14
ドシル
10
言語学の1分野である「音声学」に特化した入門書。言語聴覚士になりたい高校生なんかにかなりオススメしたい本。私自身、音声学のことはよくわからないが色んな他の学問とも関わりながら幅広い研究がされていることがよくわかった。個人的には、音象徴と福祉音声学に興味を持った。声紋分析も興味深い。でも、数学は苦手(笑)2018/03/07