出版社内容情報
まもなく70億人に達する世界人口。エネルギー不足への危機感が招いた最悪の石油流出事故。大規模な農地開発はアラル海を砂漠に変え、乱獲と開発によって世界各地の淡水魚が絶滅寸前に。最新データから地球と人間の「事件」を読み解く。
内容説明
二〇世紀に誕生した量子力学は、それまでの古典力学とはまったく異なる世界観に基づく。その違いは、常識的な「実在」概念の根本的転換にあった。しかし、それが深刻に認識されるようになったのは「量子もつれ」という概念の有用性が提起されてからである。アインシュタインのEPR論文をはじめ実在性と因果律、そして自由意志の根本を問う。
目次
1 量子力学とは―スピンの世界
2 EPRパラドックス―量子力学は完全か?
3 ベルの定理―局所性・実在性との矛盾
4 コッヘン‐スペッカーの定理―状況に依存する実在
5 自由意志定理―素粒子は自由意志を持つか?
著者等紹介
筒井泉[ツツイイズミ]
1957年生まれ。東京大学教養学部基礎科学科卒業。東京工業大学大学院で学位取得後、ハンブルク大学、ダブリン高等研究所、東京大学原子核研究所を経て、高エネルギー加速器研究機構・素粒子原子核研究所准教授。専門は素粒子論・量子基礎論(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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calaf
8
観測者の自由意志か、局所性か、決定論か。この3つのうち、少なくとも一つは間違っている...というのが、現在物理学(?)の結論。どれも常識的には正しいはず(ように思える)の事だけど、三者が揃って正しいという可能性はないらしい...これが自由意志定理。どれが間違っているのか、、、現在はまだ明らかではない。それだけではなく、将来明らかになるかどうかも不明???2011/12/15
T.Y.
7
量子力学が明らかにする素粒子の常識に反した振る舞いについて、スピンの基本的性格、EPR論文の唱えたパラドックス、ベルの定理(局所性もしくは実在性への問い質し)、コッヘン-スペンカーの定理(状況依存性)、自由意志定理(非決定論)を順次解説。あまり数式を使わず、場合によっては科学部記者あかりとヒロシの架空の対話を使っての説明の分かりやすさもさることながら、「自由意志定理」という近年の研究の紹介というだけでも価値あり。コンパクトで手頃な入門書。2016/12/24
Yoshi
3
量子もつれに関する解説本。 量子もつれは、アインシュタインも信じることができなかった、奇妙な現象である。 量子もつれは、最近では、量子テレポーテーションなど実応用へ向けた開発が行われているホットトピック。 しかし、非決定論を自由意志というのはかなり乱暴な議論。 哲学分野で自由意志論といえば、普通は、非決定論と自由意志は区別するもの。確率的であることは自由意志を擁護しないとカントが論じたことによるのだが。2023/09/05
かしゃるふぁ
3
タイトルはなんかすごいアレだけど、中身は真面目な量子基礎論の一般向けの解説です。薄い本でありながら、自由意思定理という先端の話題にも触れているところがすごいです。自由意思定理がなんとなく分かったような気には少しはなれましたが、もっと(数式もある)詳しい本・論文を読まないといけないなと思いました。やはり、量子力学の解釈みたいな話は難しいです。EPRパラドックスの話なんかもコンパクトにまとまっているので量子力学の勉強の副読本としてよいかもしれません。2013/11/22
void
3
【★★★☆☆】スピンの系から、①量子力学のエッセンス、②量子のもつれによる確率的不確定的な量子力学批判(全体の確定と部分の未確定)、③局所性(近くにないと影響を与えられないはず)と実在性(測定から独立)を前提にすると量子力学に抵触するというベルの定理、④こっちを測定すればあっちが確定するという「実在の状況依存性」・完全相関から、⑤その測定を行う者の自由意思があるとすると(+局所性)④と矛盾する、ひいては因果的決定論を排すには素粒子の自由意思を認めることになるという自由意思定理。門外漢でもいけるが、(つづく2013/06/07