内容説明
二〇世紀のキリスト教を代表する思想家・神学者カール・バルト(一八八六‐一九六八)。一九二〇年代に、神の啓示の絶対性を説く“危機神学”で神学・思想界に衝撃を与え、ナチ政権が成立するとプロテスタント諸教派を超えた抵抗運動を主導した。危機の時代にあっても、希望とユーモアを武器に現実と格闘し続けた、その思想と政治的活動にいま何を見るべきか。
目次
第1章 警鐘を鳴らすザイルに手をかけて
第2章 全体主義的“均制化”に抗して
第3章 ヒトラーのヨーロッパ支配と闘う
第4章 東西対立と冷戦の論理を越えて
第5章 自由と解放への希望
終章 「治めていたもう方がおられる」
著者等紹介
宮田光雄[ミヤタミツオ]
1928年、高知県に生まれる。1951年、東京大学法学部卒業。東北大学名誉教授。ヨーロッパ思想史専攻(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
さえきかずひこ
15
20世紀欧州のキリスト教社会に大きな足跡と影響を残したスイス出身の神学者カール・バルトの入門的評伝。とくにナチス・ドイツ時代にドイツ国内とスイスで反ナチズムの教会運動に熱心にとりくんだ様が活写され、戦後の冷戦下でも、東西両陣営に対して批判的だったことが明晰に示される。彼にとっては、最高善である神の摂理のもとに従うことがつねに目指されていながらも、世界中のキリスト者の理想的なあり方を熟考し行動に移し続ける類稀な存在感が本書には満ちている。第5章でその信仰に結びつけた明朗なモーツァルト観が示されており印象的。2018/11/15
うえ
8
「注目されるのは、ナチ・ドイツに脅かされ、またその占領下におかれた国々にたいするバルトの文筆活動である。国境の彼方に向かう途をヒトラーとムッソリーニによってふさがれたあとでは、彼は、フランスや…ノルウェー、さらにアメリカなどのプロテスタントの教会や友人に宛てた手紙を書き送っている。…スイスでの講演「キリスト者の武器と武具」の中で…ヒトラーは「悪魔の受肉者」だ、と批判する声があると紹介した上で、バルトは、そんな言い方が「あの男をあまりに重要視しすぎることになる」だろう、とまことに面白い留保をつけている。」2021/08/06
Momoko Nishikawa
3
改革派の教会に以前通っていた事があるが、カール・バルトについては全く知らなかった。 スイス人であるがドイツの大学の神学者としてナチスと闘った。スイスの社会民主党の党員でもあり、社会問題に積極的に関わる姿勢、ユーモア、本質を見る姿勢に感銘を受けた。戦後の東西分断、冷戦についての発言も興味深い。共産主義の理想と現実に心を痛めながらも、資本主義の強欲さへの批判はとても今日的である。2016/06/06
なおた
2
岩波現代全書、シリーズ80番目、宮田光雄著『カール・バルト』、副題は「神の愉快なパルチザン」である。巻末に著者からのメッセージが以下のように書かれていた。「20世紀最大のプロテスタント神学者カール・バルト。彼の政治的な思想、発言や行動に焦点を合わせて、さまざまの《全体主義》と闘った足跡をたどります。」この一文を読んで「しまった!」と思った。わたしが欲しているのはバルトの神学であって、それ以外ではないのだから...。図書館本、タイトルだけで貸出、けっきょく未読に終わりました。2023/10/14
もといくん
0
岩波現代全書「カール・バルト」宮田光雄読了。歴史的プロテスタント神学者カール・バルト。彼の政治的思想や発言から現代社会へも通じるメッセージを受け取った。 彼の神に対する誠実さ謙虚さ。そして激動の時代にあるにも関わらずもてるユーモアと鋭い視線。ものごとに対してしたたかでゆとりを持ち一歩手前の真剣さで取り組む彼の姿勢に学ぶことは大いにあった。2021/12/17




