内容説明
歴史的に農業は人間の生命を支え、社会を支えてきた。しかし、日本農業は従来のあり方では立ち行かなくなった。TPP問題等も重なって、生き残りの道を必死で模索している。経済成長一本槍の時代を終え、成熟社会に移行しつつある日本の農業の現在地を、歴史的な観点から捉え直し、近未来の食と農のビジョンを、経済学をベースに考える。
目次
序章 食料・農業と経済学
第1章 フード・セキュリティ―途上国と先進国
第2章 経済発展と農業
第3章 経済成長と食生活
第4章 農業の成長と技術進歩
第5章 変わる農業、変わらぬ農業
終章 開かれた議論のために
著者等紹介
生源寺眞一[ショウゲンジシンイチ]
1951年愛知県生まれ。東京大学農学部農業経済学科卒業。農林水産省農事試験場研究員、北海道農業試験場研究員、東京大学農学部助教授、同教授を経て、名古屋大学大学院生命農学研究科教授。この間、ケンブリッジ大学客員研究員、東京大学大学院農学生命科学研究科長・農学部長を務める。専攻は農業経済学(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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えも
15
さすが生源寺先生。農業経済学の入門書でありながら、日本農業の現状を紹介し、なおかつ今後進むべき、あるいは行政が進めるべき方向を提案している。「思い」が詰まっているから難しい教科書なのに面白い本になっている。参考になります。2014/01/03
壱萬弐仟縁
11
中山間地域農業は食料供給のみならず、奥行きある文化的価値を継承し、水利システムも維持してきた(14-15頁)。8億6800万人の栄養不足人口(2012年FAO)の衝撃(21頁~)。彼らの98%が途上国で暮らす(41頁)。持続可能な開発の概念もまた、指摘はされていないが、3・11後の除染については深刻に受け止めるべきであろう。なぜなら、持続不可能だから。中山間の英訳(イギリス英語)はLess Favoured Areasで、条件不利地域とはいうが、私が直訳すれば、ちょっと好ましからざる地域、ではないか? 2013/12/20
Mealla0v0
4
農業経済学を標榜しながらも、経済学で農業をすべて語れるわけではない、と断言している点が面白い発想だろう。農業あるいは食糧を取り巻く世界情勢と日本の状況を適切に配分しつつ論じているが、世界の栄養不足人口の議論やマルサス・テーゼの有効範囲、フード・セキュリティの問題は、グローバル生政治を考える上でも興味深い論点だ。崖っぷちと言われる日本農業の問題も見えてきて、これも農政上の大きな課題だと理解したが、そのアンサーとして「成長社会」から「成熟社会」へという転換は、方向性として有意だと思う。有限性を如何に生きるか。2018/03/06
takao
3
ふむ2024/04/12
セヱマ
3
農業経済学側に寄せた内容。いつも分かりやすい生源寺さんの本としてはやや難しめ。 家族農業、法人経営、集落営農、形はどうあれ、日本農業の抱える最大の課題である稲作はそうはいっても守らないといけない。文化そのものなのだ。保護政策ももう少しあってよいはず。15ha規模はないと生計は立たない。欧米と比較して、それでもまだ規模は小さ過ぎる。 日本農業賞賛派は生産額ベースで論ずるが、危機派はカロリーベースを持ち出す。中身を理解する必要がある。ともあれ、食料時給力は低下傾向にある。悲観するほどではないが、安心ではない。2020/11/05