出版社内容情報
19世紀末の北仏ブルターニュの漁村.せつない長年の誤解もとけ,想い想われる男と女が結ばれてわずか6日のち,氷島(アイスランド)近海へと出漁していった夫は,ふたたび生きて帰ることがなかった…….大海に生きる人びとの苛酷な宿命を,印象派の画家をおもわせるタッチで描きあげた19世紀フランス文学の名作.
内容説明
19世紀末、北フランスはブルターニュの漁村。せつない長年の誤解もとけ、想い想われる男と女が結ばれてわずか6日後、氷島(アイスランド)近海へと出漁していった夫は、ふたたび生きて帰ることはなかった…。大海に生きる人々の苛酷な宿命を、印象派の画家を思わせるタッチで描きあげたロチの名作。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
壱萬参仟縁
10
「ヤンは、正直に、自分の漁師としての生活や、辛い仕事のことや、給金のことや、長男たる自分を含めてガオ家の十四人の子供を育てなければならなかった親の昔の窮迫ぶりなどを話した」(47頁)。14人の子供を? たまげた。リアルな風景描写もあるので(171頁の格闘場面など)、引用を憚られる。海の男たち。「独り者なら独り者らしく、見送り娘たちに最後の一瞥を投げると、くったくなく立ち去っていくのであった。妻帯者なら(略)穏やかな悲しみと、(略)善良な希望をこめて、(略)妻や、子供たちに接吻していた」(264頁)。愛か。2014/02/21
ラウリスタ~
7
ブルターニュ地方というのはフランスでも特殊な地方性を持っているところ。そこの漁師は、フランスというよりむしろアイスランド沖の海に生きている。ブルターニュの女達は、兵隊と海に奪われていく息子、夫、孫たちの帰りをむなしく待ち続ける。フランスらしい風景描写の見事さが印象に残る。先輩がこの作品における地方性をテーマに卒業論文を書いている。コスプレしている変な人という印象があるロチですが、きれいな小説をか書くんですね。ブルトンの人々のアイデンティティーについて考えさせられる。ケルトの仲間意識みたいなのが印象深い。2010/11/08
きゅー
6
タイトルの氷島はアイスランドの謂。登場するのはフランスのブルターニュ地方で暮らすアイスランド系漁夫。遠洋漁業に従事している彼らは、半年間家族や恋人と離れ船上の生活をする。主人公のガオもそうした漁夫の一人。ガオとヒロインがお互い愛し合いながらも、素直にそれを言葉にできないじれったさが本書の軸となる。ひたすらに憂鬱・陰鬱な雰囲気が物語を支配している。徹頭徹尾ほの暗く、死の雰囲気に満たされている。北方の海は荒れ、霧がかかっている。町の教会には、海で死んだ男たちの墓が並んでいる。逃れられない運命。2023/10/05
ゆかっぴ
6
ブルターニュ地方に住む人たちの生活や素朴な心情、自然環境などがすっと入ってきます。遠洋漁業に出かける男たち、待ちわびる女たち、船が戻って恋愛や家族団欒を楽しむ人々。結婚して初めて船が戻るのを待つ妻の感情の動きが見事に描かれて胸が苦しくなるほどです。2013/05/06
ゼルビーチャ
3
ベタな恋愛小説かと思ってたけど大違い。心のひだに入る登場人物達の心の動きやブルターニュ地方、アイスランド沖の壮絶な時化などの描写が秀逸。お勧めできる一冊!2014/09/28
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