岩波現代全書<br> 変格探偵小説入門―奇想の遺産

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岩波現代全書
変格探偵小説入門―奇想の遺産

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  • サイズ B6判/ページ数 288p/高さ 20cm
  • 商品コード 9784000291132
  • NDC分類 910.26
  • Cコード C0395

内容説明

「謎解き」を主眼とする本格探偵小説に対し、変格探偵小説と呼ばれて来たのは、怪奇、幻想、猟奇、SF、秘境、冒険、シュールレアリスムなどの要素を含んだ、多様な小説群である。江戸川乱歩、横溝正史、小酒井不木、夢野久作、橘外男、渡辺温、久生十蘭、西尾正…。彼らはみな、変格探偵小説の書き手として活躍した。狭義の推理小説の枠を超えた豊饒さで読者を魅了しつつ、今日まで途絶えることなく受け継がれてきた「変格」の精神史を、豊富な資料から論じる。

目次

第1章 「変格探偵小説」とは何か
第2章 変格探偵作家としての江戸川乱歩
第3章 変格の血脈―横溝正史が受け継いだもの
第4章 医文学者の変格―小酒井不木の「健全」と「不健全」
第5章 変格派の雄・夢野久作―未知の精神領域へ
第6章 変格のリアリズム―「実話」をめぐる試行
第7章 変格のローカリズム―都市、秘境、そして鎌倉
結語にかえて―あらためて、変革とは、探偵小説とは?

著者等紹介

谷口基[タニグチモトイ]
1964年生まれ。立教大学大学院文学研究科博士後期課程満期退学。早稲田大学文学学術院兼任講師などを経て、現在茨城大学人文学部准教授。博士(文学)。専門は日本近現代文学、大衆文学研究。共編著『「新青年」読本』で第2回大衆文学研究賞(研究・考証部門)受賞。共同研究。「清張文学の基層」で第1回松本清張研究奨励事業入選。著書『戦前戦後異端文学論―奇想と反骨』(新典社)で第10回本格ミステリ大賞(評論・研究部門)を受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

HANA

44
変格探偵小説を論じた一冊。中心は作品論であり各作家一、二編をそれぞれ取り上げて論じている。その点、入門いう題名には少々難あり。ただ谷崎や芥川といった探偵小説前史から乱歩、正史を経て戦後まもなくまでを俯瞰した内容は、通史として楽しむ事ができた。それにしても横溝正史、もっと取り上げるべき作品があるだろうに。個人的に好きな夢野久作、橘外男の関係等はそれぞれ詳細に論じられていて、この辺りは満足。やはりこういう本を読むと、論じられている本を読みたくなる。「変格」の魅力を語るのは十分成功しているなあ。2013/10/02

hanchyan@ふむ……いちりある

37
べらぼうに面白かった。張った付箋が35枚(笑)。“それまで天にあってスノッブのみが賞用可能なメインカルチャーの一つだった文学が、歴史的過渡期に際してサブカルチャーとして地に降臨した態様、それそのものが所謂『探偵小説』であり、『本格探偵小説』は、その一ジャンルに過ぎない”という視座!ふだんコソコソと顔色伺いつつ(笑)「ヘンなの好き」を標榜してる自分にとってコペルニクス的転回だったぞ!生粋の『本格ミステリ』こそ少数派の専門種であって、その他有象無象なんでもアリこそが多数派だったのだ!!多種多様自由自在な(↓)2016/10/01

Ecriture

7
唯心文化と唯物文化が交錯する過渡期の歴史を留める新文学として探偵小説は模索された。明治維新が投げかけた強すぎる光によって祓われた霊たちを泉鏡花や柳田國男が別の形で呼び寄せたことからさらに進んで、モダニズムがもたらす新たな「怪奇」と因果関係を解き明かすためには怨霊復讐譚ではなく非論理の論理に貫かれた探偵小説が必要であった。映画メディアと近代産業下の強欲の「化け物」と、法の網をすり抜ける「変態」を描いた谷崎潤一郎に変格のふるさとを見出し、従来の芸術と文芸の枠をはみ出した「変格」的な表現の「変革」を読み解く。2015/04/06

黒い森会長

3
戦前の探偵小説、変格探偵小説についての解説。第1章はその歴史。谷崎、佐藤、菊池寛、らの純文学作家たちの「探偵趣味」から、江戸川乱歩の「変格探偵小説」の誕生へ。第2章以後は作家論。乱歩、戦前の横溝、小酒井不木、夢野久作、橘外男、西尾正。とくに、橘外男が、戦前の作家で、牧逸馬のような実話作家であったことに驚く。秘境作家だと思っていた。読みどころは「夢野久作」。変格探偵作家として理想的小説「ドグラマグラ」を完成させたところか。作者の熱が入っている。2017/08/25

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2
探偵小説の本質は謎解きパズルではない。例えばホームズは近代啓蒙主義の申し子であり、科学と理性によって古い伝統や因習を相対化する。ここには近代啓蒙主義 VS 前近代の伝統という対立の構図がある。この二つの思想の衝突するところに軋轢が生まれ、これこそが探偵小説の本質であると思う。さて、本書で扱う明治以降の日本では、突如輸入された西洋化によりそれまであった日本の非合理的なものを排除する動きが起きる。それに反発するように大量のグロテスクなもの、怪奇趣味、変態性欲、異常心理が溢れて探偵小説の形を取る。→2025/04/20

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