内容説明
現代人にとって避けられない重要な課題を掘り下げ解決するための手がかり、「情感豊かな理性」の働きに依拠するカントの多元主義的な思想に見出し、従来のステレオタイプ化したカント像を見直す。最先端の現代思想家たちの問題提起と対比させて新たな読み方を提示した「現代カント入門」。
目次
第1講 カントの批判哲学の射程(本講義の主要課題;新しいカントの読み方;カントにとっての現代)
第2講 カントの「啓蒙」の再評価をめぐって(カントの「啓蒙」再評価のねらい;『啓蒙とはなにか』をめぐって;啓蒙思想の制限と現代における啓蒙の課題)
第3講 カントの多元主義と可謬主義(ニーチェの批判主義;カントの遠近法主義;情感的理性の構築に向けて)
第4講 多元主義の立場と政治哲学(反省的判断力とアーレントの政治的判断力論;歴史哲学と永遠平和論の意義;普遍主義と相対主義の間)
著者等紹介
牧野英二[マキノエイジ]
1948年生。現在、法政大学文学部教授。哲学・倫理学・感性学(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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ともすけ
5
カント哲学の現代における論点が詳しく紹介されている。その論点が膨大なためにそのひとつひとつが紹介程度に終わっている。しかし興味を持った論点については巻末の参考文献にあたることによってより詳しく学ぶことができるようになっている。カントというと観念論という先入見があるがそれに留まらずニーチェのパースペクティブと比較しカントのパースペクティブという観点からその重要性について説いている。惜しむらくは文章の構成が非常に独特で読むのに苦労を強いられることであろう。重要論点の羅列という味のないものになっているのが残念。2016/06/03
hakootoko
4
普遍主義と相対主義というテーマで、カントへの戦後思想、現代思想からの評価・批判を紹介・解説する一般向けの講義。物自体、啓蒙、カントの遠近法主義、アーレントを中心に扱った多元主義とカントの政治哲学。大変わかりやすく、読みやすい。参考文献も全部訳あり。カントについてあの人何言ってるかなと思ったら。完全誤謬の不可能性のテーゼが印象に残った。2020/10/26