内容説明
悲惨の中にあってもなお輝く人間の気高さを、深い共感とともに描いた『イーリアス』。西洋文学史に屹立するこの叙事詩を味読し、その尽きせぬ魅力に迫る。さらに著者の年来の研究にもとづき、口誦詩としての意義を明らかにしつつ、ギリシア古典文化のホメーロス的特質を論じる。
目次
第1講 トロイアとトロイア戦争
第2講 「アキレウスの怒り」と「ゼウスの計画」
第3講 戦い・運命・武士の誉れ
第4講 パトロクロスとアキレウス
第5講 アキレウスとヘクトール
第6講 アキレウスとプリアモス
ホメーロスとギリシア文化―結びにかえて
著者等紹介
川島重成[カワシマシゲナリ]
1938年生まれ。西洋古典学者。国際基督教大学名誉教授(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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Koning
21
そのものズバリホメーロスを読む講座の再録的まとめ本。イーリアスの史実性であるとかその辺から始まって口承から記述へという古事記と同じようなあれこれについて考察される。しかし、以外と人間の記憶力を見くびった話が主流だったのねん。しかしミュケーネ滅亡からポリス文化花開く時代までの暗黒時代あればこそってのは確かにそうだよなーと思わされる。LinearAとかLinearBでギリシア語書かれてたら新約もアラム語だったに違いない(笑)2015/02/10
takakomama
2
<『イーリアス』を読む>という6回のセミナーの書籍化。「イーリアス」の歴史的背景やあらすじ、全体の構成、注目すべきポイントなどがわかりやすかったです。岩波文庫の「イリアス 上下」と併読。2025/04/14
かー
2
パリスVSメネラオスやヘレネーによるアカイア方の王の紹介は戦争初期に行われたことを詩人が『イーリアス』に組み込んだ、など丁寧に解説している。『イリアス』の主人公たるアキレウスについても濃い。個人的にはヘクトルとアンドロマケについてじっくり語ってくれたことが嬉しい。あとディオメデスについてかつてないほど褒めたたえているので、ファンの方は是非。2016/10/01
うつほ
1
イリアスを通し、トロイアの時代の人々の死生観、信念について検討する。講義の再録と思われるが、非常に読みやすく要点を拾っている。読み方の指南も兼ねているので、イリアスと一緒に読むと良いのかもしれない2016/11/12