内容説明
新古典派総合によるケインズ解釈に対する批判的考察を通して、ケインズの金融市場に関わる独自な分析枠組みこそが『一般理論』の本質であることを明らかにし、その再定式化を企てる。金融の不安定性で混迷する現代経済への積極的対応策を探った本書によって、リーマンショック後に再評価された著者の思考を読み解くことが出来る。
目次
第1章 『一般理論』とその解釈
第2章 通説―標準的ケインズ解釈
第3章 基本的な視点
第4章 企業金融と資産価格の決定
第5章 投資理論
第6章 金融機関、金融不安、投資
第7章 新しい解釈の含意
第8章 社会哲学と経済政策
第9章 新しい解釈の政治的含意
著者等紹介
ミンスキー,ハイマン・P.[ミンスキー,ハイマンP.] [Minsky,Hyman P.]
1919‐96。1941年シカゴ大学卒業後、ハーバード大学にてP.A.サミュエルソン、W.レオンチェフに師事しPh.D.取得。ブラウン大学、カリフォルニア大学バークレイ校を経て、1965‐90年ワシントン大学(セントルイス)教授
堀内昭義[ホリウチアキヨシ]
1943年生まれ。東京大学経済学部卒業、同大学院経済学研究科博士課程修了。横浜国立大学経済学部、一橋大学経済研究所、東京大学経済学部を経て、央大学総合政策学部教授(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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Francis
10
ケインズの「一般理論」のヒックスなどによる解釈がケインズが批判したはずの新古典派の枠組みで行われたことでケインズが同著で不完全ながらも示した金融と景気循環との繋がりが見失われた、と考える著者が「一般理論」に含まれる景気循環と金融関係について理論化を試みたもの。ただでさえ難しいと言われる一般理論を普通の人にはなおさらとっつきにくい金融理論の枠組みで大胆に解釈するのだから、この本を咀嚼するのは難しいが、この本を理解できれば金融緩和がなぜバブルにつながるかへのヒントが得られるはず。2019/05/15
yuki
1
ケインズ理論の解説本というより、ミンスキーが古典派経済学よりに書かれた一般理論を解釈しなおした本である。アメリカケインジアンが古典派、新古典派の理論を下にどのようにケインズ理論が解釈されていったのか、その問題点を指摘している。残念な点は訳者が新古典派であるがために、意義がある社会哲学と経済政策の点に関してなんら解説が加わっていない所だ。