内容説明
梨盗み、女性との同棲と離別、マニ教への傾倒―多感な青年時代、人生の海を漂流したすえに、ついに回心にいたった“わたし”。この稀有な自伝からは、アウグスティヌスが、そしてかれとともに生きたひとびとが、さまざまなことばをわたしたちに語りかけてくる。それは、「荒波さわぐ人間の社会」のまっただなかにあって、「愛」によってむすばれる共同体をつくろうとしたひとびとの声だ。キリスト教の時代に誕生した「あたらしい叙事詩」として、『告白』を丹念に読みほどく。
目次
第1部 書物の旅路―あたらしい叙事詩か?(どのような書物か;書かれた時期と背景;なぜ、だれにむけて書かれたのか;『告白』の読者たち)
第2部 作品世界を読む―愛にむすばれた社会をめざして(神と人間―創造、原罪、救済;幼年時代と少年時代;梨を盗む;『ホルテンシウス』体験とマニ教徒時代 ほか)
著者等紹介
松崎一平[マツザキイッペイ]
1953年、大分県生まれ。1982年、京都大学大学院文学研究科博士課程学修退学。現在、富山大学人文学部教授。西洋哲学史(中世)専攻(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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KAZOO
16
アウグスティヌスの名前は知っていますがその著作については読んだことがありません。この本はそのアウグスティヌスの代表作「告白」を学生時代から30年以上も研究してきた先生の著作です。「告白」という題名だけからすると僧侶が何か懺悔をする感じですが、もっと読みやすい若いころの心情をつづったエッセイのような感じの本のようです。私は世界の名著でも購入して読みたくなりました。2014/06/19
ふきみや
0
流し読みで、飛ばした部分もある。その上での感想だが、「告白」がどういう本であるのか、まだ読んだことのない自分の理解に(実際に読んでいる人からすればうっすらとした理解だろうが)役立った。1600年前の人物であるアウグスティヌスが抱えていた悩みは、現代に生きる私たちとも通じるものがある。また、「悲劇をたのしむ心の欺瞞」の指摘にはぎょっとする思いもあった。「ではわたしの神よ、わたしはいったいなにものか。わたしはどのような本性か。複雑多様な、まことにもってはかりしれない生命だ」という言葉の重み、響きに感じ入った。2022/03/21