出版社内容情報
近代の人間像を、「男性性に拘束されジェンダー化された」存在として解読し解放。フェミニズムのインパクトを受けた「男」たちの思想の最前線。
内容説明
ジェンダー化された存在としての男性とその男性性が、当事者によって、さらに多様に再検討されている。解放運動としての自己省察=メンズ・リブ、DVやさまざまな暴力への取り組み、ゲイムーブメント、学問領域における展開まで、フェミニズムのインパクトを受けて切り拓かれた、実践的再定義の数々を紹介する。
目次
男性学・男性性研究の過去・現在・未来
1 メンズ・リブ
2 男性学の誕生
3 男のセクシュアリティ
4 家事・育児する男たち
5 企業戦士たち
6 ゲイ・スタディーズ
増補編1 男性学の発展
増補編2 暴力と男の身体
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
とよぽん
27
フェミニズムが女性の人権に寄り添うのに対して、男性学は男性の人権に寄り添う学問だ。最近の、といってもこの20年ぐらいの間に発表された文章が載っている。ほとんど男性の執筆者だ。参考文献には女性の書いた書籍や論文が多数。男性学はフェミニズムと対立するのではなく、紙の表裏一体という関係だと思う。男は、強くなくてもいい。女は男に依存せず自立しよう。今後の男女共生のあり方は・・・?2019/05/04
nbhd
12
別冊宝島「女がわからない!」(1990年)に掲載された山崎浩一さんの論考が面白かった。論考の前段で「3つの予防線」が記される。かいつまむと、①「男女」の語順に序列の意味はない。②「男/女」はセクシュアリティ・ジェンダーの性概念区分を指示する場合と、そうではない場合が混在している。③私は「この世には100%男と100%女しかいない」などとは信じない。「こんな“おことわり”をしなければ男と女の関係についてうっかり語れない(と思い込んでいる)自分がいる」。90年には『うっかり語れない問題』がすでにあったのだね。2021/02/16
お魚くわえたザサエさん
1
ジェンダーというと女性の問題だと捉えられがちだが、男性もまた、性別役割分担意識の中で、「強い者」として生きることを強制されている。「女らしさ」から女性を解放することは行われているものの、「男らしさ」から男性を解放することの重要性には気づかれないでいることを指摘する。女らしさからの解放と男らしさからの解放はセットである。DVなどの犯罪を見つめるためにもジェンダーの視点が欠かせない。ジェンダーの問題を男女双方の問題であると社会が認識することの重要性を実感する。2015/04/04
tooka
1
男性学の変遷。時代背景は無視できないものの、創成期には女性に対する気持ちの悪い媚びを感じた。とはいえ、男性学は自立した学問ではないと感じていたが、「まぁ、必要かな?」くらいには思うようになった。憂うべきは奇しくもフェミニズムと同じく年代ギャップよ。2010/09/22
konor!
0
他者論の講義で聴いたことやXでの東海オンエアの炎上沙汰を頭の隅に置きつつ読んでいた。自分の中に他者を他者とするためのラベルが大量に存在することを痛いほどに感じ打ちのめされる。橋本治『男の子リブのすすめ』同性愛の根源的な意味にも触れつつ、いまの男性の抱える未発達や孤独について。渡辺恒夫『抑圧された男性』ある男性の体験は“男ぶらずに”語られているように感じる。ヘテロ男性によるそういう語りはやはり結構珍しいものだよなと思った。彦坂諦『「戦争と性」にまつわる神話―兵士は殺し殺されるために女を犯す』やはり。2023/10/26