内容説明
文字で書かれるようになったことで、和歌の文芸としての質は激変した。書くことの呪術性、表記の戯れ、能書の誕生、商品としての書蹟など、歌を「書く」という行為は思いがけない発展を遂げ、時代のなかで多様な意味を獲得していった。書道史・美術史研究の成果とも連携しつつ、和歌における書記の諸相を多角的に分析する。
目次
序論 声から紙へ―和歌の宿る場所
1 和歌を書くこと(紀貫之の仮名文―偽装の日本語音;書くことの呪術;高野切の江戸)
2 和歌を書く人々(藤原定家の書の周辺;明恵の自筆草稿を読む;能書の家)
3 元永本古今集を読む(元永本の美学;浮動するテクスト;表記の戯れ)