内容説明
すべてが語り尽くされ、言葉にリアリティが失われている―プラトンが立っていたのは、そんな場所だった。生きられた思考の方へ、謎と迷宮がいきいきと動き始める対話篇への招待。
目次
未知なる知の根拠
第1部 対話と想起(「対話篇」ということ;想起説の意味するもの;「思っているがままを言ってくれたまえ」―対話を導くソクラテスの目論見)
第2部 対話とイデア(ロゴスの中での考察―「第二の航海」とイデア仮設;三つの比喩に関する覚書―『国家』における「線分」と「洞窟」;感覚的事物とイデアとの間―三本の指の意味するもの)
第3部 対話と記述(後期著作における対話性;「書かれたもの」への批判)
問うことの力―知のありかをめぐる断章
著者等紹介
内山勝利[ウチヤマカツトシ]
1942年生まれ。専攻、ギリシア哲学。京都大学大学院博士課程単位取得。現在、京都大学大学院文学研究科教授(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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Bevel
2
「それでは、ひとは自分の知らないものであれば、それを探求しなければならないということに、われわれの意見が一致しているのだから、われわれは力を合わせて、徳とはそもそも何であるのかということを探求することにしようか」「君には私と共同してともに考察してもらわねばならない」論駁の末至った、協力という中期対話篇の態度を超えて、ソクラテスは沈黙へと辿りつく。魂の対話、そして受け継がれるあり方が交錯する後期対話篇について、もう少し知りたいなと思った。2012/03/07
鵜殿篤
1
諸々の先行研究を読む前は、イデア論を相対化するという姿勢はとても自然に見えたわけだけど。しかし分厚い研究史を踏まえてみると、手を突っ込むと火傷必至の恐ろしい領域だと認識させられる。そんななかで、本書は対話という形式に着目することで、イデア論を相対化しようと試みている。その試みを説得力あるものに育てるためには、本当にたくさんの細かい手続きを踏まえなくてはならない。後期著作の位置づけや、「書かれたもの」に対するプラトンの評価など、厄介な問題が多い。たいへんだ。2017/08/14