出版社内容情報
あらゆるジャンルを超えて批評空間を創造してきた著者の初の作品集成.厖大な仕事のなかから,英語やその他の言語に翻訳された著作・論文のみを選定し,翻訳時の改稿に加えてあらたに全面的な吟味をほどこし,国際的な「定本」とする.他言語の読者を含みこんだ多声的なテクストは,思想の未来をはらんだ未曾有の空間である.
内容説明
新章「ジャンルの消滅」、外国語版への序文4篇を増補。全面改稿成る。
目次
第1章 風景の発見
第2章 内面の発見
第3章 告白という制度
第4章 病という意味
第5章 児童の発見
第6章 構成力について―二つの論争
第7章 ジャンルの消滅
あとがきおよび外国語版への序文
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ころこ
29
随分改稿されており、こちらの方が『原本』よりも論旨がつかみ易い印象です。『原本』には無い第7章ジャンルの消滅は、前半がある種の漱石論になっています。ノースロップ・フライのフィクションの4類型(ノヴェル・ロマンス・告白・アナトミー)によると『猫』=アナトミー、『幻影の盾』『夢十夜』=ロマンス、『こころ』=告白、ノヴェルは書いていない。「没理想論争」において鴎外ではなく逍遥に着き、小説の歴史的発展を否定するのは、『文学論』を書いていた漱石がはじめから理論を背景にして書いていたからだといいます。2020/12/02
masabi
21
【要旨】日本において近代文学の成立の背景に倒錯があったことをみる。【感想】前提となる日本文学の知識が欠けているのでよくわからなかった。1970年代のころから批評家から思想家への移行が準備されていたようだ。2016/12/04
LimyAlmond
1
120ページまでしか読んでない。鶏が先か卵が先かみたいな話が多かった。今までは鶏が先だとされていたが、その鶏の自覚には卵が必要だった。的なやつとか。『規制や抑圧を受けることで初めて自覚される概念』についての指摘とかも多かった。とはいえ意味がわからない部分がめっちゃ多かった。指示語が苦手なのかもしれない。抽象的な話が読めないのかもしれない。2017/06/03
amanon
1
このような非常にユニークな、こう言ってよければ非常に特殊な日本文学論が四カ国語に訳されているという事実に驚かされる。また、このような著書が書かれた背景には、日本が他のどのアジア諸国とも違う近代化の道のりを歩んだということがあるのでは?という気に改めてさせられた。これまで読んできた他の著書と重複する内容も少なくないが、日本近代文学というテーマで一つにまとめ上げられることでまた新たな意味を帯びてくると思う。個人的には谷崎と芥川の論争を巡る考察が特に興味深く読めた。ただ、最終章に物足りなさを感じたが…2013/01/07
nonfiction
0
面白かった。内容もさることながら、驚かされるのはその発想の柔軟性。応用度が高く大変参考になる。明治期の小説入門としてもいいかも。2014/08/17