出版社内容情報
いま世界は急速にボーダレス化している.ところが海域世界では,むかしから人類はボーダレスに生きてきていた.現代のネット社会に大きな指針を与える海域世界の歴史と現在を,膨大な資料と大胆な視点で分析する.
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
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本書では、グローバル化論における「閉じた共同体から開かれた世界システムへ」という図式に対し、フィリピン南部のスールー海域における流動的な海民社会の歴史的分析を通して、むしろ植民地化や国民国家への志向が開放系の海域社会に対して境界を書き込んでいったという視点を対置します。さらに、その境界によって発生した差異を巧みに利用する現代の海民たちを記述することで、実は極めて現代的な行為であった「越境」が考察されます。本書もアンダーソンを下敷きにしていますが、それよりも網野善彦の「日本海文化圏」に近いものを感じました。2009/11/03