出版社内容情報
近代を超えるキーワードとして使用される「クレオール」は,現実のクレオール的な生のあり方とは乖離しているのではないか.カリブ海世界をフィールドとして,新しい語りのスタイルで現代のクレオールの実像を探究する.
目次
第1章 「起源」の不在(「村」―あるいは均質なる多様性;カーニヴァル―あるいは(仮面))
第2章 叫ぶ人々―容体の優位(「見かけ」と「内実」;叫ぶ人々 ほか)
第3章 ダグラ―ハイブリディティと「先行」の美学(ハイブリディティ―「主体」という分水嶺;フランス領カリブの「クレオール性」と「主体」 ほか)
第4章 黒い乙女―分有と共同性(聖母―植民地主義という神話;聖なる牧女(ラ・デイヴイナ・パストラ) ほか)
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
★★★★★
1
「現代人類学の射程」シリーズの一冊。トリニダード・トバゴをフィールドに、インド系・アフリカ系を中心とした複雑な民族構成の住民が示す宗教的行動を通じて、「異他なるもの」の存在を介して初めて意味の立ち現われる現象が記述されます。(たとえば、ヒンドゥーとカトリックの両者から信仰される女神と、それをめぐる相克) そして、他者に対する従属化への反省から「主体」に重点を置きがちなポストコロニアルの議論を、「他者性」の視点から乗り越えてゆく方途が、ナンシーの議論を援用しつつ模索されてゆくわけです。なかなか興味深いです。2009/11/20
☆☆☆☆☆☆☆
0
再読。分析の鋭さに改めて感嘆しました。ポストコロニアルなハイブリディティ礼賛においてこっそりと再導入される啓蒙主義的な主体概念を注意深く見極めつつ、「抵抗」といったような主体の言語への回収ではない、もう一つの記述を追求すること。2012/08/27
ROBART
0
ジャン=リュック・ナンシー読まな。。2010/01/27