出版社内容情報
日本宗教の現世主義という特性は,現代社会の病理とあいまって,オウム真理教という小さな宗教集団にあれほどの暴力をふるわせ,無残な結末をもたらした.その道筋を丹念に分析し,超越の領域を希求する,待望の現代日本宗教論.
目次
序章 現世主義と暴力性
第1章 暴力の正当化(暴力批判の立場;「悪魔の陰謀」と「情報操作」;タントラヤーナ ほか)
第2章 暴力を誘ったもの(現世拒否と終末予言;ヴァジラヤーナの教えと終末予言;グル崇拝と技術主義 ほか)
第3章 現世主義から暴力へ(阿含宗から受け継いだもの;ヨーガの実修とその枠づけ;現世否定と生活世界からの疎外)
第4章 現代宗教の可能性(現世主義の空洞化;超越の頽落;現代宗教の可能性)
結語
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
Koushi Kawasoe
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昨年、松本智津夫死刑囚をはじめ、地下鉄サリン事件関係死刑囚の全ての刑執行が完了したこともあり、私のオウム真理教に対する興味は増していた。本書ではその教義的、儀礼的な特徴が、暴力へとつながっていく様子が克明に著されている。また、行き詰まりを見せる既成宗教の現世主義的傾向と、抑圧的な社会体制に対するアンチテーゼとして、当時の若者たちがオウム真理教に惹かれた一方で、内部ではむしろ多くの矛盾に満ちていた、というアイロニーは本書の一番の見どころではないかと思う。一宗教者として、本書より様々な示唆を与えてもらった。2019/02/14