内容説明
「北朝鮮のスパイ養成機関!」「密入国の子孫!」「不法占拠!」―二〇〇九年一二月四日、昼休み中の京都朝鮮第一初級学校は、校門前に押しかけた「在特会」メンバーらの怒号で騒然となった。何人もの子どもが泣きじゃくるなか、一時間もの街宣が強行され、その後も二度のデモが繰り返された。保護者や教師たちはリスク覚悟で法的措置に踏み切る。先人から受け継いだ学校と、何よりも「子どもの尊厳」を守るために―過激化するヘイトデモ/ヘイトスピーチの一つの原点ともいえるこの衝撃的事件は、日本社会に何を問いかけるのか。保護者や教師、生徒、さらには弁護士や支援者らの証言を通し、四年間に亘る闘いの軌跡を再構築。彼、彼女らの「覚悟と決断」が拓いた地平を描く渾身のルポ。
目次
1 当日
2 第一初級学校の歴史、変わる状況
3 襲撃直後の混乱
4 法的応戦へ
5 止まらぬ街宣
6 疲弊する教師たち
7 捜査機関という障壁
8 法廷―回復の場、二次被害の場
9 故郷
著者等紹介
中村一成[ナカムライルソン]
ジャーナリスト。1969年生まれ。毎日新聞記者を経てフリー。在日朝鮮人や移住労働者、難民を取り巻く問題や、死刑が主なテーマ。映画評も執筆している(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
kinkin
36
在特会という存在、ヘイトクライム、人権、表現の自由、街宣の動画から見えるものは、悪意そのものしかないと感じた。歴史的な背景があるにせよ、それはそれ、これからの日本という国の立ち位置が関係する重要な問題。マスコミ報道にヘイトスピーチは出てこない。マスコミそのもがヘイトクライムととらえられるためか。悪質なスピーチの内容はもっと糾弾されてもいいのではないか。2014/11/09
おかむら
14
ネットと愛国を読んでいたのでこの事件は知ってましたが、ヘイトスピーチあまりに酷い。心が折れそうで動画は見れないわ。この本を読んで初めて朝鮮学校の成り立ちや現状を知りました。小さいことながら通学定期の割引率さえ違ってたなんて。アメリカンスクールはオシャレだけど朝鮮学校はちょっとコワイかも、とかなんとなく思い込んでた自分の無知ぶり無関心ぶりが恥ずかしい。そして外国人への憎しみであんなに盛り上がる日本人がいることもただただ恥ずかしい。民度低いし狭い。2014/10/24
midnightbluesky
10
安田浩一氏の在特会を取材した本と合わせて読むと、事件の深刻さがより実感できると思う。襲撃事件が主題ではあるが、読んでゆくと、人間の心に潜むどす黒い感情というのは、ひょっとして誰にでもあるのではないのか?その暗黒面はちょっとしたきっかけで表に出てくるのではないのか?という恐怖すら覚えてしまった。ある意味日常に潜む恐怖。2014/08/08
tellme0112
7
泣けた。傷つかずにたたかうことはできず、たたかわずして勝ち取ることは出来ないんだな。「そもそも我々に人権なんてあったか?」という言葉に、理不尽なことがらを我慢し続けてきた半生を感じる。揺れ動く気持ちを丁寧にうつしだしていた。「「忘却が次の虐殺を準備する」…略…私たちは、「第一初級襲撃事件」の後ではなく、次の事件の前にいる。ならば今、私、私たちは何をすべきか。」ー記憶にとどめた文。日本人に、読んでてほしい。これを許していて、オリンピックが本当に日本でできるのか?2014/04/13
makoppe
5
とりあえず、全てのこの国に生きる人に読んで欲しい。悔しくてたまらない現実がこの本には詰まっている。私たち一人一人と、それによって構成されるこの社会に、民族差別があり、苦しみ続けなければならない人がいるという事実から、絶対に目をそらしてはいけないと思うから。人間の尊厳を守るための闘いと、何としても連帯していかなければならないと思うから。過去と向き合い、現在を変える力を、この本は作ってくれると思う。2015/01/19