唐代伝奇小説論―悲しみと憧れと

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  • サイズ A5判/ページ数 257p/高さ 22cm
  • 商品コード 9784000259545
  • NDC分類 923.4
  • Cコード C0098

出版社内容情報

思うに任せぬ立身出世、愛し合っても別離を選択せざるを得ない男女関係――。いつの時代も現実社会は矛盾に満ち、不条理な出来事が多く発生する。女性を主人公とした虚構世界の様々な恋愛悲劇に、唐代の知識階層に属する作者たちはどんな思いを込めたのか。人生とは、運命とは何か語りかけてくる作品群を、丹念に読み解く。

内容説明

人々は、憧れを抱くゆえに、現実の中で、多くの悲しみに遭遇せざるを得ない。貫くことの難しい恋人との関係や、思うにまかせぬ立身出世。唐の士大夫階層に属する作者たちの小説創作は、どのような価値観にかたちを与えようとする営みだったのか。一面の古鏡の喪失に託して一門の衰亡を悲しむ「古鏡記」、女性を捨てたことを自己弁護しつつ、悔恨をにじませる「鶯鶯伝」、長安という大都市に集中した、様々な階層の伝承の上に成り立つ「李娃伝」、女性のせつない願いに背いた主人公が受ける応報を描く「霍小玉伝」などの代表作品を取り上げ、唐代の社会の中で伝奇小説が果たした役割を読み解く。

目次

序論―語りの場から作品へ(語りの場;語りの内容と形式;作品の形成―伝と伝奇)
第1章 古鏡記―太原王氏の伝承(「王度古鏡記」の形成;「文中子中説」の形成;太原王氏の伝承;門閥の命運と宝器)
第2章 鶯鶯伝―元白文学集団の小説創作(伝奇小説と歌行詩;尤物論;夢遊春;婚仕の際)
第3章 李娃伝―長安のまちと人々(李娃の性格;下降から上昇へ;「李娃伝」の多層構造)
第4章 霍小玉伝―伝奇小説の挫折(「霍小玉伝」のあらすじ;李益と蒋防;色愛と婚仕と;豪侠たち;伝奇小説の挫折)

著者等紹介

小南一郎[コミナミイチロウ]
1942年、京都市に生まれる。1969年、京都大学文学研究科博士課程単位取得退学。京都大学人文科学研究所教授、龍谷大学文学部教授を歴任。現在は、泉屋博古館館長、京都大学名誉教授。専攻は、中国古代伝承文化史研究(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー

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takao

1
ふむ2024/10/19

韓信

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古鏡記、鶯鶯伝、李娃伝、霍小玉伝ら、唐代伝奇小説の傑作群の成立背景を追究する論文集。唐代の伝奇小説は士大夫階層が余暇に行う(魏晋南北朝時代の貴族であれば人物評をしていたような)サロン的な物語の場で形成され、そこには太原王氏や滎陽鄭氏のような門閥に伝わっていた伝承が反映されたり、官界で挫折した士大夫が、科挙合格前に支えてくれた恋人を捨て、出世のために名家から妻を迎えようとする「婚仕」の風習が蔓延るような、官界の非人間性への懐疑が小説という形で昇華されていると論じる。唐代社会を知る上でも一読の価値がある良書。2018/12/10

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