出版社内容情報
思うに任せぬ立身出世、愛し合っても別離を選択せざるを得ない男女関係――。いつの時代も現実社会は矛盾に満ち、不条理な出来事が多く発生する。女性を主人公とした虚構世界の様々な恋愛悲劇に、唐代の知識階層に属する作者たちはどんな思いを込めたのか。人生とは、運命とは何か語りかけてくる作品群を、丹念に読み解く。
内容説明
人々は、憧れを抱くゆえに、現実の中で、多くの悲しみに遭遇せざるを得ない。貫くことの難しい恋人との関係や、思うにまかせぬ立身出世。唐の士大夫階層に属する作者たちの小説創作は、どのような価値観にかたちを与えようとする営みだったのか。一面の古鏡の喪失に託して一門の衰亡を悲しむ「古鏡記」、女性を捨てたことを自己弁護しつつ、悔恨をにじませる「鶯鶯伝」、長安という大都市に集中した、様々な階層の伝承の上に成り立つ「李娃伝」、女性のせつない願いに背いた主人公が受ける応報を描く「霍小玉伝」などの代表作品を取り上げ、唐代の社会の中で伝奇小説が果たした役割を読み解く。
目次
序論―語りの場から作品へ(語りの場;語りの内容と形式;作品の形成―伝と伝奇)
第1章 古鏡記―太原王氏の伝承(「王度古鏡記」の形成;「文中子中説」の形成;太原王氏の伝承;門閥の命運と宝器)
第2章 鶯鶯伝―元白文学集団の小説創作(伝奇小説と歌行詩;尤物論;夢遊春;婚仕の際)
第3章 李娃伝―長安のまちと人々(李娃の性格;下降から上昇へ;「李娃伝」の多層構造)
第4章 霍小玉伝―伝奇小説の挫折(「霍小玉伝」のあらすじ;李益と蒋防;色愛と婚仕と;豪侠たち;伝奇小説の挫折)
著者等紹介
小南一郎[コミナミイチロウ]
1942年、京都市に生まれる。1969年、京都大学文学研究科博士課程単位取得退学。京都大学人文科学研究所教授、龍谷大学文学部教授を歴任。現在は、泉屋博古館館長、京都大学名誉教授。専攻は、中国古代伝承文化史研究(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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韓信