内容説明
世界一の高品質と言われる日本の映画字幕。その製作をめぐる職人的極意から、憂慮すべきニホンゴ問題まで一刀両断、気鋭の字幕翻訳者による書下ろしエッセイ。銀幕の裏で呻吟する字幕屋にも、字数制限さえなければ広い渡世がありました。日々発展の技術のもと、刻々変貌する日本語に喘ぎ、されど時代と言葉の伴走者、字幕文化の灯は消すまじ―。
目次
1 映画字幕のつくり方(突然、炎のごとく―字幕工程ひととおり;大事な大事なハコ入り台本―「ハコ書き」侮るべからず;謎の黒幕「スポッティング」;ようやく翻訳―字幕は「1秒=4字」;字幕原稿の書き方1 書式編 ほか)
2 平均的なニホンゴ(カッコの品格;カタカナ・ダイエット;恥ずかしい言葉;言葉の歯ごたえ;物語の口当たり ほか)
著者等紹介
太田直子[オオタナオコ]
映画字幕翻訳者。1959年広島県生まれ。天理大学外国語学部ロシア学科卒業。映画翻訳家協会会員(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
1 ~ 1件/全1件
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
Nobu A
11
太田直子著書2冊目。前著と被る部分もあるが、映画字幕業界の扉がより開かれる。翻訳家でなく字幕屋と自ら呼ぶのが他の翻訳業との違いを如実に表す。両言語に精通の必要がある翻訳。これまで読んできた翻訳家の著書は全て微に入り細に入り表現力がとても豊か。彼女の場合、加えてユーモアもあり読みながら何度も笑ってしまった。日本語に対する拘りは勉強になることが多い。比喩表現の「筋力トレーニングと同じで、負荷をかけないと思考力はつかない」は言い得て妙。激しく同意。読んでいると感じさせない字幕の追究に筆者のプロ意識を垣間見た。2020/03/01
月華
10
図書館 いろいろ赤裸々に語られていて、読んでいてくすっとしてしまうところがありました。仕事がきてから、完成までの時間はこんなに短いんだ、とびっくりしました。2017/07/14
うさぎ
7
映画は字幕派。声は本人の声が聞きたいから。字幕見てこの単語言うかなあって思いながら見たり、英語の字幕出して自分で翻訳してみたりしてたなぁ。翻訳の仕事してみたかったなぁと思いながら読みました。2017/04/06
NANA
7
字幕映画が大好きな人向けのエッセイ。日本語が好きな人でも楽しめる1冊です。時々毒舌が入るけど、そんなところも魅力的。2016/12/17
マカロニ マカロン
7
個人の感想です:A-。1959年生まれのベテランの映画字幕翻訳者(字幕屋と自称)。映画の字幕は受注から約2週間で出来上がってしまうくらいのスピード勝負で、その過程が著者の私生活も含めて綿密に書き込まれていてとても興味深かった。「ハコ書き」、「スポッティング」という初めて聞く作業が重要で、それをもとに1秒当たり4文字で翻訳していく。字幕翻訳者には外国語力は必要だが、それ以上にむしろ、制限された時数の中でいかに内容をうまく伝えられるかという日本語の文章力、要約力が必要とされる。映画の裏方さんの仕事に大感謝。2016/12/07