内容説明
かつての拷問官は、七年後、外交官として韓成三の前に現れた。東京のホテルの喫茶店で、怯えて前に座る韓成三に、その外交官は、在日の作家・金一潭の韓国訪問工作に協力するよう命じる。「お前は忠誠国民を誓ったはずだ」―。拷問に屈服して以降、魂の抜けたように生きてきた韓。恐怖と復讐への思いで街を彷徨う彼は、このとき、一つのことを決断する。名作『火山島』の作者が描く、人間「復活」の物語。
著者等紹介
金石範[キムソクポム]
1925年生まれ。作家。1967年『鴉の死』でデビュー。代表作は、韓国済州島の「四・三蜂起」をテーマとした『火山島』(全7巻)で、同作品により大佛次郎賞、毎日芸術賞を受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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hasegawa noboru
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”ことばが身から離れぬ”。ことばにできぬほどの、国家暴力、突然の理不尽な拷問を受け続けた男(韓成三・ハンソンサム)はその後、その経験について語ることばを持ち得るか。1984年在日韓国人留学生として滞在中突然KCIAに捕らえられ、非道きわまる拷問によって間諜者にでっちあげられ廃人同然の犬となって帰国した主人公に7年後、当の拷問官が韓国領事館員として現れるというメインストーリー。この作家には書かねばならぬことがある。それが直に伝わって、痛く、重い。表現上のベタさ、妻や悪の側のステレオタイプ等に不満は残るが。2015/10/01
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