内容説明
仕事熱心で笑顔のたえない女性記者の死。遺族、友人、NHK関係者など109名への取材から、彼女の生きた証と巨大メディアの裏側を描きだす。
目次
1 はい。都庁クラブ、佐戸です
2 佐戸記者誕生物語
3 光るものを持っていた少女
4 酷暑の中の参院選取材
5 「未和さんが亡くなりました」
6 明らかになった二〇九時間の時間外労働
7 遅れた周知
8 突然の公表
9 ふるさと、長崎での誓い
10 未和さん、さどちん、そして未和へ
著者等紹介
尾崎孝史[オザキタカシ]
映像制作者、写真家。NHKでドキュメンタリー番組の映像制作に携わる。組作品『厳冬 警戒区域』で視点賞。写真集『SEALDs untitled stories未来へつなぐ27の物語』(canal+)で日隅一雄賞奨励賞。JRP年度賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
チェアー
13
なぜ彼女が過労死したのかは、この本に協力できないNHKであるがゆえ、という答えが最もふさわしい。いくら良心的な人でも、組織のなかに入り、組織に守られていくと、組織を守る人になる。そして、組織が考えた通りに行動することが、自分の良心だと思いこむようになる。だから過労死はなくならない。組織が体裁を整えて、「ほら言ったからな」という姿勢を続ける限り、はたらく人に立場に立たない限り、過労死はなくならない。2019/06/26
えいなえいな
12
当時新聞かネットでこのニュースを見て、NHKの記者が過労死とかおかしいんじゃないの!?と思った覚えがあり、書店で見かけた時に食いついてしまいました。その時は購入はしなかったのですが、最近古本屋をぶらぶらしていたら発見し購入しました。読んでみて、たしかに当時それほど騒がれていなかった覚えがあります。本書に書かれているようにNHKが隠蔽まがいの事をしていたらかなりショックです。ただ、読み物としてはもう一歩迫力が欲しかったな、という感想です。過労死の詳細データだけでかなりインパクトありますけどね。2019/09/14
海燕
6
「働き方改革」が行き届かない業界、現場はまだ数多あるという現実。このNHKに限らず、類似の事例は他にも見られるはず。この件が大きく取り上げられるのは、公共放送であるNHKが、事案発生から数年の間、それを公表せずにいたことの重大性からか。電通社員の自死については重ねて報道していたにもかかわらず、である。団体の規模が大きくなるほど組織は官僚的になり、組織防衛のため不祥事の類いは隠蔽する方向で処理される。何にしても、前途ある意欲的な若手職員が亡くなったことは、残念であり大きな損失だ。2021/05/05
トト
5
31歳の若さで過労により病死した、NHK記者を追ったノンフィクション。 同じ時期に過労自死として話題となった、電通の女性社員に比べて記憶に薄いのだが、その理由についても語られています。 こういった企業の「事件」を見る度に、組織の、個を軽んじる怖さを感じます。 いずれ、仕事を頑張る人が組織に属さなくなる時代がくるので、過労死も死語となる日が来るでしょう。2019/06/16
Cana.t.kazu
4
大きな組織,特にマスコミの欺瞞には飽き飽きしていますが,彼女が或いは彼女たちがその中ですりつぶされていった事実が腹立たしく涙が浮かびます。 一方で本の冒頭でルポであるはずが,著者の感想などが入りながら始まるのが記事に没頭するのを妨げられました。 2025/04/27