民族の創出―まつろわぬ人々、隠された多様性

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  • サイズ B6判/ページ数 384p/高さ 20cm
  • 商品コード 9784000248723
  • NDC分類 210.3
  • Cコード C0021

内容説明

古代の王政復古を掲げて近代国家の仲間入りを図った日本では、記紀神話に民族のルーツを求めて大和民族という概念が創り出されるが、古代に遡る民族設定は大和に「まつろわぬ」人々とされた出雲、エミシ、クマソ等の民族も同時に生み出した。混合民族論が主流だった日本で、戦後単一民族論が拡がったのはなぜか。大和中心のNation Building(民族意識や国民の形成)を出雲、エミシ、クマソの視点から捉え直し、同質社会観で覆い隠された日本人内部の多様性を解き明かしながら、多元国家観に基づく民族意識の再構築を説く。

目次

第1章 出雲からみた民族の創出
第2章 言語不通の列島から単一言語発言への軌跡
第3章 二人の現津神―出雲からみた天皇制
第4章 創られた建国神話と民族意識―記紀と出雲神話の矛盾
第5章 島国観再考―内なる多文化社会論構築のために
第6章 アテルイ復権の軌跡とエミシ意識の覚醒
第7章 クマソ復権運動と南九州人のアイデンティティ
第8章 新たな民族の誕生―池間民族に関する考察
終章 同質社会幻想からの脱却と多元社会観の構築

著者等紹介

岡本雅享[オカモトマサタカ]
1967年、出雲市生まれ。島根県立出雲高等学校、明治学院大学国際学部卒業。北京師範学院、中央民族学院留学。横浜市立大学大学院国際文化研究科修士課程、一橋大学大学院社会学研究科博士課程修了。国際学修士。社会学博士。現在、福岡県立大学人間社会学部准教授。2008年度、サンフランシスコ州立大学(San Francisco State University)民族学部(College of Ethnic Studies)に客員研究者(Visiting Scholar)として在籍(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー

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Masatoshi Oyu

10
日本社会に多様性を取り戻すため、明治に服ろわぬ民として創造され、現代では忘れられた諸民族(出雲、熊襲・隼人、蝦夷等)を再度創出すべき、といった主張。なんでそんな話になるのかというと、昨今の「ニッポン凄い+排外主義」の真因はアイデンティティの危機にあるという筆者の問題認識からである。アイヌ、琉球や在日コリアン等には、すでに民族意識があり、それがアイデンティティの核の一つになっている。しかしながら、古来大和政権に服属していたような地域は、記紀神話をベースに創られた「神話」によって民族意識が塗りつぶされている。2023/12/31

ドラマチックガス

7
「勉強になった」と「おもしろかった」の両方を高い次元で満たしてくれる本だった。ひたすらに繰り返されるのは、①天皇を中心とする大和民族という見方は明治に作られた。②明治以前の日本は言語も多様でまごうことなき多民族国家だった。③それらの人々はこれまた明治時代になってまとめてまつろわぬ民的に一括にされた。ということ。「都市部の人が『日本は多民族国家だ、アイヌや在日の人々がいるから』というとき、アイヌや在日の人々を除いた人々も実は多民族であることを見落としている」というような指摘があまりにその通りで堪えた。2021/10/27

ドビン

1
ネーションビルディングの脱構築と著書にもあるように、「民族」概念とステートの近代的結びつきを解きほぐす視点を豊かに示してくれた本。2016/04/11

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