出版社内容情報
歴史や文化,人種やジェンダーを対象に数々の理論が語られながら,文学は理論の分析対象から消え去ってしまったかに見える.だが,あらゆる言説には「文学的なもの」が潜んでいるのだ.小説と国民国家,全知の語り,実践としての批評など,多様なトピックを取り上げ,文学理論のもつ豊かなパースペクティヴを浮彫りにする.
内容説明
文学研究の垣根をこえ、批評理論は広く人文学的研究の枠組みとして浸透した。だが、歴史や文化、人種やジェンダーを対象に数々の理論が語られながら、理論の視野からは急に文学それ自体が消え去ってしまったかに見える。小説と国民国家、行為遂行的なもの、過剰解釈、全知の語り、哲学の悪文など、多様なテーマを論じながら、あらためて理論と文学の再接合をはかり、「文学的なもの」に焦点をあてて、文学理論のもつ豊かなパースペクティヴを浮き彫りにする。
目次
理論(理論の中の文学;小説と国民国家;理論への抵抗)
諸概念(テクスト、その運命の転変;記号―ソシュールとデリダ、恣意性について;行為遂行的なもの;解釈―「過剰解釈」を弁護する;全知)
批評的実践(悪い文章と良い哲学;批評的著述;カルチュラル・スタディーズ;とうとう比較文学)
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
メルセ・ひすい
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15-117 1990年~2004年のアメリカに於ける文学理論の先頭に立つ実践者の歴史的概観と文学批評。論文が主体。自己の人生に密着した正確な記述であり具体的な表現。小説・国民国家、行為遂行的なもの、ゆきすぎ過剰解釈、全知のかたり、哲学といいながらの悪文…多様なテーマ、構造主義の特徴、反復する相同構造への関心を論じる。理論の分析対象から消え去ってしまったかに見える「文学」。だが、あらゆる言説には「文学的なもの」が潜んでいる。多様なトピックを取り上げ、文学理論のもつ豊かなパースペクティヴを浮彫りにする。 2011/12/20
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文学理論のおすすめ書籍でよく名前が挙がる「ジョナサンカラーの『文学理論』」はこの本じゃなかったということに気付いた時には遅かったよ。三人称小説の書き方において良く言われる全知という考え方に対してのいや別に作者は全知全能の神じゃないだろという当たり前すぎるツッコミとか、あと作品の一部分から一般的な文学理論の問題に向かう詩学を作品の解釈と峻別するという考え方とか割と面白い。デリダとドマンについても手っ取り早く分かる2014/12/05
こんな本を読んだよ
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私たちは輪になって踊り想像してみる、でも秘密は真ん中に座って知っている。(ロバート・フロスト) 同時に生起する出来事の提示を通じて「全知の読者の心の中に埋め込まれた」世界を作り出す語りの技法が重要な小説の特徴で、読者に境界線で囲まれた共同体を再現してみせる。(アンダーソン) 第7章と8章は興味深い。2012/01/14