内容説明
動物や死者の魂の声を聴き取ることのできる不思議な少女・パリ。飢餓に苦しむ北朝鮮を逃れて国境を越えたパリは、家族全員を失いたった一人で世界に投げ出される。行き着いたロンドンは、移民、難民が世界中から吹き寄せられる街。テロや暴力に苦しむ世界中の声が、パリの耳に響く。そこで出会ったのは、パキスタンから来た一人の男…。韓国随一の作家黄〓(せき)瑛は、89年、国禁を犯して北朝鮮に渡り、帰国後五年間、獄に投じられた。その後はパリ、ロンドンに居を移し、世界中を渡り歩いた。「パリデギ」はその経験を踏まえ、移民、難民の側から現代世界の苦しみ、哀しみを描いた小説である。
著者等紹介
黄〓暎[ファンソギョン]
現代韓国で最も人気の高い作家。1943年長春(中国)生まれ。1962年文壇にデビュー。1971年『客地』(邦訳、岩波書店、1986年)で高い評価を得る
青柳優子[アオヤギユウコ]
翻訳家。市民の集い「コリア文庫」主宰(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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井月 奎(いづき けい)
24
人は昔、鏡に映したように似ていたのではないでしょうか。しかし存在が世界に広がり、気候や地形、文化や言葉の違いが少しずつ鏡を歪めて、国を分割して、同じ源を持つ宗教 が複数に別れたときに人々は変化を余儀なくされ、その際に憎しみや妬みが生まれてこぼれ落ち、それは強く邪で人々は肉親を殺され、自らの心を破壊されながら蹂躙されます。それでも許す、許すことが無理でも憎しみの連鎖は止めなければ、未来永劫に人々は傷つけあい、憎しみを生み続けてしまうのです。これは今突きつけられている私たちの命の問題なのです。 2016/05/22
Porco
20
脱北し、ロンドンに渡り、パキスタン出身の男性と結婚した女性が、ロンドン同時爆破テロに遭遇する。世界と北朝鮮は、こういう形でもつながるのか。2018/02/17
たまきら
17
今年3ヶ月間で一番胸に迫った本です。北朝鮮で生まれ育ち、その後難民となって生きる霊感の強い女性が主人公。彼女が語る「自分の憎しみに囚われている人」の開放の部分で涙が止まらなかった。親だけでなく、国も持たない存在。誰にも守られず、肉体も精神も蹂躙され、ゴミのように捨てられる人間とも認められない存在。希望の兆しがあるかと思えば消え、消えたかと思えば点滅し、物語は唐突に「これから」を暗示させて終わる。けれども私たちは毎日を送っていく。その積み重ねが愛しく尊く感じられる。秀逸。2018/03/23
NICK6
8
二つの世界で呼吸する少女。現実の世界(強制的に向き合わされる過酷な世界)と、愛した死者たちとの濃密に対峙する世界。生きる為に、逆境時は世界を入れ替える。小説は神話的でありながらも物語を瑞々しい呼吸感でいっぱいにしている。抽象夢想に陥らない柔らかい語りが特徴だ。ゆっくりとした治癒の時間。再起への、救いへのプロセス。美しく感動的な筆致に酔う。苦難に満ちた過去を支えあった死者たちとの、深く強い絆。決して手放されない純粋。備わった自らの力。それが少女を救う。素晴らしい小説 2023/12/10
かしこ
3
7番目の娘として生まれたのも不運、北朝鮮飢餓の時期に生まれたのも不運のパリ。叔父の脱北から不幸は加速し、一家散り散りとなりながら中国の国境の川を越える。隠れ住む山の冬は厳しく家族は次々に死んでいく。パリはひとり中国のマッサージ店で働くが、彼女は不思議な力を持っていて、客の体の状態がわかるし、死者とも交信できる。山火事、密航船、人身売買、死者にも支えられながら現実の地獄を渡る。ロンドンに渡ってからも911、麻薬、テロと事件が続きすぎ。でも抑制した調子で現実と幻想が混じって面白い。犬もとてもいい。2026/01/24




