内容説明
都市の魅力とはなにか―。「岩波写真文庫」の仕事で日本全国を旅した写真家が、複雑な表情をもつ東京に惹かれ、都内を隅々まで歩き、ランドマークを見上げ、街を見下ろし、人々の暮らしを追った。写真に残されたのは、戦後の混乱期から高度成長期へと移り変わるころの、ゆっくりと時間が流れている東京だ。
著者等紹介
長野重一[ナガノシゲイチ]
1925年、大分市生まれ。32年に上京、養母と暮らす。47年に慶應義塾大学卒業後、『週刊サンニュース』の編集に携わる。49年、岩波映画製作所に入社し、「岩波写真文庫」のスタッフカメラマンとなる。54年に岩波映画を退社後は、フリーランスとして雑誌等で活躍。映画やTVコマーシャルの仕事を経て、80年代より、写真活動を再開(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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わんつーろっく
17
今までも変わりゆく東京の写真集を数多く見てきたが、1950年代に特化したこの写真集、若き日の両親が見てきたであろう風景と重なり、なんだか泣きそうになってしまった。誰ひとりカメラ目線の被写体はいなくて、自然体の人々がその時代を力強く生きている。戦後の占領時代を終え、オリンピックや高度成長へ向かう前の、比較的平穏な時代。銀座のビルの屋上で洗濯物を干していたり、運動したりおしゃべりしたり、路地のこどもは裸足で遊んでいる。日本の人口はどんどん減っているのに、こんなに空が狭くなっていくのは何故なの。2024/08/17
シガー&シュガー
16
占領時代を終え、日常を取り戻し始めた東京を精力的に撮り納めた一冊。長野さんが映像にも携わっていたと知って、ページをめくる間中、流れるような動きを感じていたことに納得。風俗はもちろん興味深く、空が画面の多くを占める東京の街や、まるでレゴブロックで作ってみたいようなコマコマした住居、敗戦の記憶が新しいはずの日々の中に映し出される人々の顔がのんびりしていることなど鮮やかな驚きに満ちていた。そこにいたはずがないのに何故懐かしいように思うのかな。昔が良いわけじゃないけど、今のほうが良いばかりでもないなと思った。2017/04/19
eulogist2001
7
★3.5郷愁というよりは、日本もこんなに猥雑で小汚く無闇に欲望に溢れた風景があったんだとまざまざと感じる。いわゆる芸術写真ではないので、すべてにピントが合い、構図もしっかりとしたもの。その分、現場のリアルな生々しさが伝わる。芸術写真も嫌いではないが、歴史としてはこちらの価値が高いと感じた。2021/04/19
なななな
3
そこに暮らす市井の人々を写した一瞬に、今も昔も変わらない熱量を強く感じる。風景はどこも面影がなさすぎるw 愛宕山のトンネルが今と変わっていないのが良かった。 上野の写真で子どもたちが仏像に乗って遊んでいる写真があるが、こんなの今は見られない光景だし昔はアリだったの?とびっくり。仏様の顔が心なしか嬉しそうなのも素敵な写真。2023/01/16