出版社内容情報
社会進化論と優生思想,民族主義と人種主義,身体の国民化とジェンダー….近代世界が非対称的ながら等しく直面した問題群を,中国はどう経験していったのか.多彩な史料読解をもとに,中国の近代を共時性のなかから描きだす.
内容説明
社会進化論と優生思想、民族主義と人種主義、身体の国民化とジェンダー…。近代世界が非対称的ながら等しく直面したこれらの問題群を、中国はどう経験し、自らの近代を彫琢していったのか。梁啓超、譚祠同、章炳麟らの思想家、女性教育家、科学者、「纒足」廃止論者などのテキストを、広い視野のもとに縦横に読み解き、中国の近代を描き出す。
目次
序章 近代の旅路―一九〇三年中国女性
第1章 中国民族主義の神話―進化論・人種観・博覧会事件
第2章 恋愛神聖と優生思想
第3章 足のディスコース
第4章 民族学・多民族国家論―費孝通
終章 近代から見える現在
著者等紹介
坂元ひろ子[サカモトヒロコ]
東京大学大学院人文科学研究科博士課程退学。専攻は近現代中国思想文化史、山口大学・東京都立大学を経て、現在、一橋大学大学院社会学研究科教授
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
Toska
11
良書。タイトルはつかみどころがないように見えるが、対象を清末〜民国初期に絞ることでテーマが明確になっている。列強の侵略に蝕まれた中国が、近代国家への脱皮を目指してもがき苦しんだ時代。そこで中国の特異性を云々するのではなく、中国も日本も欧米もひとしく同じ時代の要請に取り組んだと捉え、その共時性に着目しているのが本書の肝と思う。実際、近代化を焦る清末の知識人たちは西洋仕込みの社会ダーウィニズム的な思想を受け入れ、優生学にまで手を出している。その過程で日本は媒介の役割を果たしており、決して他人事ではなかった。2025/10/21