内容説明
岩波版新約聖書の訳者が、読み替えを手がかりに、現代に生きる新約思想を語る。異読・転釈解説集付き。
目次
1 「洗礼」と「十字架」―訳語はこれでよいか?
2 終止符と全時的「今」―ヨハネ福音書一章3‐4節の翻訳によせて
3 「小さくされた者たち」の共同体―原始キリスト教における「家の教会」と宣教
4 弱いときにこそ―パウロの「十字架の神学」
5 偽名で書かれた手紙―偽パウロ・公同書簡の意図と戦略
6 終末観と永遠の時―黙示文学のヴィジョン
異読・転釈解説集
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
優希
64
旧約篇同様、岩波書店の新約聖書の補足的な本でした。岩波の新約聖書に足を踏み込んだ内容になっており、翻訳の字義等の解説が中心になっていましたが、聖書の訳の誤りなどが指摘され、新約聖書を奥深いものにしていると思います。新約聖書理解の助けにはなりますが、前提には岩波書店の新約聖書ありきでしょう。2016/05/02
きゃんたか
16
「十字架」と当たり前に訳されてきたこの言葉。本書は原意を去勢されたものと批判、代案としての「杭殺柱」。己の杭殺柱を担って私に従え……杭殺刑に処されてしまったイエス……初っ端から容赦ない訳者の悪戯にニヤリ。本書の読後には、街々に彩られたネックレスやイルミネーションまで、禍々しくも滑稽に映ること請け合いである。個人的にはヨハネ書のロゴス論と黙示録のイメージ論が白眉。「初めに言ありき。」さて、言とは成ったものか、生じたものか。世紀末を謳った映画は数あれど、ハルマゲドンの啓示は子羊の流血無しに有り得ないのである。2017/09/02
てっしー
7
岩波版新約聖書翻訳委員会メンバーによる、翻訳作業終了後の「落穂拾い」の集積だそうで、なかなかに興味深かった。特に第1章の佐藤研氏による「洗礼」と「十字架」という訳語が誤訳であるという考察は実に面白い。我々はキリストの処刑具を「十字架」と呼ぶ事で、お洒落なアクセサリーにしてしまったのだろうか。他の章では「手紙」にはかなり偽名のものが多い事や、最後の章の黙示録を構造から読み解く試み等、聖書の奥行きの深さと膨らみの大きさをじっくり堪能できる。ただ前提として新共同訳聖書の知識が不可欠かもしれない。2013/05/13
Tonex
2
最初の「洗礼」と「十字架」の訳語の話は面白かったが、後は専門的すぎてよくわからなかった。2013/10/04
おなかム
2
十字架こわい2013/02/01