内容説明
ソヴィエト崩壊とともに評価ががた落ちしたレーニン。「レーニン」は、コミュニズムの「実験」が崩壊し、帝国的グローバリズムが世界を席巻するこの時代にあって、抹消されるべき“取扱注意の参照項”となってしまった。しかし今、われわれはまさにレーニンが直面した状況と本質的に通底する時代に生きているのだ。“八九‐九〇年”の終焉を新たな始源とするために、いまこそレーニンが再通過されねばならない。資本主義社会の新たな展開を前にレーニンの遺産を継承することの意義を説く本書は、反時代の反時代的な再読の勧めに他ならない。
目次
レーニンの選択―二つの革命の狭間で
真理への権利
唯物論再論
スターリン主義の内的偉大
シューベルトを聴くレーニン
レーニンは隣人を愛したか?
行為への移行から“行為”それ自体へ
贖いの暴力
純粋政治に抗して
信ずるところを知らざればなり
「文化資本主義」
ポスト・ポリティクスに抗して
現代イデオロギー
控除の政治はあるか?
回帰と反復
著者等紹介
ジジェク,スラヴォイ[ジジェク,スラヴォイ][Zizek,Slavoj]
1949年、スロヴェニアのリュブリアーナ生まれ。哲学・精神分析。特異なヘーゲル論をはじめ、ヒッチコックに代表されるポップ・カルチャーにいたるまで、多様な現状分析の著作で知られる。邦訳多数。現在、リュブリアーナ大学社会科学研究所上級研究員
長原豊[ナガハラユタカ]
1952年生まれ。法政大学経済学部教員
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感想・レビュー
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ひろゆき
1
革命期のレーニンをキェルケゴール的「反復」で理解しようとする。イデオロギーへの仮借ない批判。「唯物論と経験批判論」への批判または深化などが興味深く、その他レーニンのベートーベンの音楽へのコメント、ブレヒトの入党の日のエピソード(労働者を弾圧する戦車に歓迎の手を振る)など、否定的解釈しかあり得ぬ行動の意味を探るのが面白い。が、相変わらず全体は僕には難しい。再読の予定。翻訳が続くのはジジェクが読まれている証拠だろうが、あくまで全てインテリ向けの様。労働者向けのパンフはないのかな?そこがアルチュセールと違う点。2011/12/20