出版社内容情報
ヨーロッパ精神史を貫く「知と信」「合理と非合理」の葛藤のドラマ---その源を、イエスに象徴される〈個〉の発見に見定め、旧約新約からキリスト教中世神学の生成まで、「愛と理性」が分裂し、また再統合されるダイナミックな過程を叙述する。
目次
1 信の構造―キリスト教文化の古層についてのエッセー(信の対象―ペルソナと化したイエス;信という働き)
2 ヨーロッパ思想の根―旧約と新約(旧約聖書の世界;旧約から新約へ)
3 愛と理性―キリスト教の思想(キリスト教思想は哲学か;愛の教説と救済史のドラマ―キリスト教の核心をなすもの;合理と非合理のたわむれ―教義の成立;王権と教権と弁証法の世紀―胎動の時代;豊かな朝―西欧の開花;トマスとフランチェスコ派―総合の時代;ドゥンス・スコトゥスとオッカム―分裂の時代)
著者等紹介
坂口ふみ[サカグチフミ]
1933年生まれ、東京大学大学院人文科学研究科比較文学比較文化修士課程修了。ミュンヘン大学にてPh.D.取得。東京大学、東北大学、清泉女学院大学を経て、東北大学名誉教授(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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はるたろうQQ
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キリスト教の三位一体論は論理的な矛盾である。何故、その矛盾に固執したのか。それは前から不思議だった。不合理ゆえに我信ずということかと思ったのだか、本書はその答えをイエスその人が現実に生きて語り、行動したことを重視したからだという。イエスは神の操り人形ではない。本質や抽象性へと還元されない個別・具体的な人間のあり方を重要視するのだという。聖書に描かれているイエスの言動は、そこに神の意思や真意を敷衍することなく、そのまま受け取らなければならないのだ。本書をこのように読んでは誤読の謗りを免れないかもしれないが。2021/10/01