内容説明
一九三六(昭和一一)年、二十数年ぶりに復活した軍部大臣現役武官制は現役軍人のみが陸軍大臣、海軍大臣に就任しうるという制度である。この制度の復活により、軍部は内閣の生殺与奪の権を握り、その後の政治を支配したというのが従来は昭和史の定説となってきた。しかし、この制度で陸軍が暴走し、日本は戦争への道を歩んだという歴史認識は果たして本当に正しいのだろうか。本書は、陸相のポストをめぐって陸軍と首相及び天皇が対立した全事例を精査し、昭和史の常識を覆す注目の書き下ろしである。
目次
第1章 広田内閣組織における陸軍の政治介入
第2章 軍部大臣現役武官制の復活
第3章 宇垣内閣の流産―「軍の総意」による「反対」
第4章 林内閣の組閣―梅津次官と石原派中堅幕僚の抗争
第5章 第一次近衛内閣における首相指名制陸相の実現―杉山陸相から板垣陸相へ
第6章 阿部内閣における天皇指名制陸相の登場―畑陸相就任の衝撃
第7章 米内内閣倒壊―畑陸相辞職と近衛文麿の役割
著者等紹介
筒井清忠[ツツイキヨタダ]
1948(昭和23)年、大分県生まれ。京都大学文学部卒業。同大学院博士課程修了。日本近現代史・歴史社会学・日本文化論。奈良女子大学助教授、京都大学教授等を経て、帝京大学文学部教授(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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takao
3
ふむ2024/03/02
wuhujiang
1
戦前くらいだと当時関わった人々による日記や回想が多量に残っていることが、かえって真相をわかりにくくしているのだなと改めて感じた。特に最終章の米内内閣倒閣など、当事者たちが都合の悪いことを隠していることが著者によって次々と明らかになっていく。このどこか足りなかったり隠されている史料群の中から正しい情報を選び、もっとも真相に近い結論を出すのは専門的な訓練や経験を積んだ歴史学者にしかできないだろう。2021/11/13
Fumihiko Kimura
1
再読。否、何回読み直したかわからない。従来、歴史家が余り重視して来なかった資料(例えば矢次一夫や河野 恒吉の著作)に新たな光を当てて史論を展開する様は痛快。副題通り軍部大臣現役武官制の虚像と実像を見事にあぶりだしている。某史家は、論文としての構成に疑義を呈していたが、展開された内容に照らせば瑣末な話。副産物も多く、梅津美治郎の立位置をここまで明らかにした著作が今まであっただろうか?是非通説側からも反論書を出して欲しい。但し、筒井氏レベルの膨大な資料に基づいて。2013/06/24
でん
0
「通説」しか知らなかった身としては非常に興味深かった。畑陸相についてもう少し調べてみたい2013/03/07