出版社内容情報
プルーストの世界的研究者は芥川が遺した草稿に魅入られた──日仏の大作家を横断しながら行われた分析は、作家の「書く」営みの深層で蠢くテクストの運動を浮かび上がらせる。急逝した著者による集大成。
内容説明
錯綜を極めるマルセル・プルーストの草稿。その第一人者が新たな光をあてる芥川龍之介の草稿。急逝した著者による草稿研究の集大成。
目次
テクストの深海を探る
プルーストの草稿研究
ボドメル博物館所蔵プルースト新資料に見る『スワン家の方へ』推敲過程
パスティーシュ
プルーストと模作
盗人の誕生
芥川龍之介におけるフランス文学の受容
芥川龍之介における異文化受容
ある文明開化のまなざし
テクストの深層をめぐる旅
著者等紹介
吉田城[ヨシダジョウ]
1950‐2005年。東京都生まれ。パリ第4大学博士課程修了(文学博士)。東京大学大学院人文科学研究科博士課程中退。元京都大学大学院文学研究科教授。専門、プルーストおよび19‐20世紀フランス文学、草稿研究(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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きつね
10
プルーストの草稿研究についての章が面白かった(なんと、気が遠くなるような、豊饒な資料体か……)。編者後記で松澤和宏氏は言う。「生成論がテクストの生成過程の復元をめざすとしても、そこにはつねに草稿あるいは前テクストを対象として構築し措定する操作が避けがたく介在している。この操作を無視ないし軽視するといわゆる実証主義に陥ることになる。研究対象を措定し、一定の問題関心に導かれてはじめて生成研究も成立しているという事実が等閑に付され、作者の執筆プロセスを生成論者がそのまま追体験しているのだという幻想が蔓延してしま2014/07/23