出版社内容情報
管理化が自己増殖的に浸透し,自我が極度に希薄化されるなかで,自己のアイデンティティの探求に苦悩する青年群像。自己のアイデンティティを前に,その揺らぎと希求のなかで,〈やさしさ〉を求めた80年代青年の同時代ドキュメントを描く。
やさしさは、一九七〇年代に進行した管理社会化の過程で、変容を迫られる。産業価値は、生産力主義を貫徹することによって、生産効率のための管理システム、管理センター、そして管理 -- 被管理関係を再生産する中間組織(たとえば学校や家族)を編成した。管理とは、産業社会がその本性上呼び出す統治・支配の新しい方式であり、石油ショック(一九七三年)以降、安定的成長に転じた、いわゆるノーマルシーの時代の抑圧の形式である。管理は、企業と官庁でモデル化され、次いで中間諸集団の共同的な関係を管理 -- 被管理関係で置き換えつつ、ついには家族にまで影を落としている。ちょうど企業での賃労働と家庭でのシャドウ・ワークがワン・セットであるように、企業での管理と学校・家庭での擬似共同体的な管理とは、互いに補完的なワン・セットをつくっている。…中略…若者はしょせん産業社会の内部でしか生きていくことができない社会が自分に課す役割を引き受けないわけにはいかない。だが自分の大事な価値は若者文化のやさしさ価値の方にある。これがやさしい若者の内面の基本構造である。(「Ⅱやさしさ」より)
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【関連書籍】
『 空間管理社会 』 阿部潔・成実弘至編 (定価2520円 2006)
『 思考のトポス 』 中山元著 (定価2520円 2006)
『 アイデンティティの権力 』 坂本佳鶴恵著 (定価3675円 2005)
内容説明
管理化が自己増殖的に浸透し、自我が極度に希薄化されるなかで、自己のアイデンティティの探求に苦悩する青年群像を同時代的に描く。アイデンティティの変容のドキュメント。
目次
やさしさ
やさしさの輪の物語
いのちの働きあいということ
子どもを見届けるために
天皇制的管理社会の「キャベツ畑の子どもたち」
身体と管理社会
共振の回復
風の尺度
若者たちと宗教
アイデンティティの履歴〔ほか〕