出版社内容情報
「高次脳機能障害」とは何か.その原因や症状,当事者の生活や社会復帰の実情は? 長年治療や相談に当ってきた著者が,この障害を適切に理解するための情報を示すとともに,臨床の場から見える現代の命をめぐる諸問題を解く道筋を探る.
内容説明
「高次脳機能障害」とは何か。その原因や症状は?当事者の生活や社会復帰をめぐる実情は?長年、当事者に寄り添いながら治療や相談、リハビリに携わってきた著者が、現代社会の構造・矛盾の縮図とも言えるこの障害を適切に理解するための情報を、様々な角度から示すとともに、診療の現場から見えてくる命をめぐる諸問題を解く道筋を探る。
目次
第1章 高次脳機能障害とは何か(臨床の場で起こっていること;診断の難しさ ほか)
第2章 認められにくい高次脳機能障害(軽度外傷性脳損傷(MTBI)という概念
意識障害や画像所見に関する新たな知見 ほか)
第3章 高次脳機能障害を取り巻く社会(医療・福祉を取り巻く社会の動向;「二〇二五年問題」と高次脳機能障害 ほか)
終章 これからの医療・福祉を考える(「相模原事件」の衝撃;医療・医学はどこへ向かうのか)
著者等紹介
山口研一郎[ヤマグチケンイチロウ]
1949年長崎県生まれ。長崎大学医学部卒業。脳神経外科、神経内科を専門とする医師。大学病院勤務などを経て、大阪府高槻市の「やまぐちクリニック」で高次脳機能障害の診療や認知リハビリに取り組む。「現代医療を考える会」代表(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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zoe
16
意識障害の診断の困難さから、患者や家族が事故や病の前後の変化を周囲から認めてもらえず、また保険の適応も困難だったり就労も叶わず金銭的にも苦しい状況だったりする。現代よりも江戸時代の方が孤立無縁とならず良い状況だったかもしれない。現代では、出生前診断、遺伝子診断、引いては遺伝子治療なども考えられ、優生学的な思想、死生観も変わりつつある。著者は科学技術と命の問題、政治経済のかかわりについて考えることが執筆のモチベーションになっているようです。登録1000冊目の本でした。2018/01/08
KF
12
高次脳機能障害と言うあまり聞き慣れない言葉が本の題名となっている。大雑把に言って「医学的専門領域」と「法廷闘争的領域」に二分される。前者は極めて分かりづらい。「日本語か?」と言うくらい混乱する。一方で後者は比較的分かりやすい。法廷闘争的な要素については「中世とか近世か?」と思いかねないが第二次世界大戦後の話題、現代の話題です。被害者を救おうとして頑張ってきた医療側の方の文筆であり、有難いと共に「え、最近まで…」と暗い気持ちになる。しかも切り開く闘いは現在進んでいる。「高次脳機能障害」と言う用語も広めたい。2021/09/30