内容説明
子どもを「つくる」かどうかは計画的に決めるもの、という考え方はどのようにして「常識」になっていったのか。その道筋を、明治期から現代までの言説をたどりつつ考察する。子どもの数を調節するための避妊や中絶という生殖技術をめぐって、国家と、女たち・男たちの価値観・思惑はどのように交錯したのか。同時期の海外での言説にも目配りし、多くの資料を渉猟して描き出す労作。
目次
第1章 避妊が「罪悪」だった頃
第2章 「しなければならぬ避妊」と「してはならぬ避妊」
第3章 堕胎という問題
第4章 「産児報国」の時代
第5章 国敗れて人口あり
第6章 「家族計画」の時代
第7章 「中絶天国」がもたらす問い
著者等紹介
荻野美穂[オギノミホ]
1945年生まれ。奈良女子大学大学院人間文化研究科博士課程中退。人文科学博士(お茶の水女子大学)。現在、大阪大学大学院文学研究科教授。専門:女性史・ジェンダー論(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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jackbdc
5
避妊・中絶を取り巻く環境の激変振りに驚く。ほんの少し前まで子供の命や女性の人権がなんて軽く扱われていたのかと知り動揺した。避妊の知識や技術の無い生活は想像し難い。著者も指摘するがここに至る道程は複雑なものでもあった。人権の進歩や女性の解放が遅れていたのが進んだという単純な理解では足りない。科学・医療技術進歩のみならず社会の構造が変わり、規範や法令も変わり、それに付随して人々の結婚、妊娠、子育てに関する考え方の変遷を感じ取る事ができた。これらの流れが不妊治療や出生前診断の問題へと続いていくのだろう。2021/11/03
takao
3
ふむ2024/02/18
nappyon
2
子どもを生むということは、どのように計画的・選択的になったのか?江戸後期から現代にかけての生殖の歴史を扱う一冊。子どもを生むことと生まないこと(中絶や避妊)がどのように捉えられてきたのか、様々な角度から見ることができました。こんなに真面目に本を読んだのは久しぶりだ。2011/02/21
かりん
2
3:具体的な記述にときたまくらっ(軽貧血)。日本家族計画協会の存在にまずびっくり。また日本は「仲人国家」になるんだろうか…。性愛のノブレス・オブリージ。生活必需物資の優先的配給が、妊婦の定期健診のインセンティブに。中絶をした女性は再妊娠する可能性がはるかに高い。まるでファシズム。上半身のセックスを語ろう。2009/06/14
みなみ
1
この種の、日本のリプロダクション政策についての本では、一番体系的にまとまっていて読み甲斐があると思う。その分、分厚いが。夥しい参考文献リストには、ただただ感服するばかり。本というより、資料集という感じが強い(優れた学術研究書の形なのかも) 個人メモ・卒論の参考文献に使用、売却。