内容説明
「私の名前はヴィクラム・ラルだ。アフリカでもっとも汚織にまみれた一人、異様かつ卑劣なまでに狡猾な詐欺師として広く知られている」―1963年、ケニア独立。そこには、西洋とアフリカ、支配と革命、無垢な友情と政治汚織の「狭間」を生き抜く、ひとりの男の生があった。ポストコロニアル文学の新境地を切り拓き、カナダの代表的文学賞・ギラー賞に2度輝いたヴァッサンジ、待望の本邦初訳。
著者等紹介
小沢自然[オザワシゼン]
1971年生。イギリス・エセックス大学にて文学博士号を取得。千葉大学文学部・関西大学文学部を経て、台湾・淡江大学外国語文学部英文学科准教授。専門は、英語圏文学、ポストコロニアル・スタディーズ(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
Porco
19
インド系ケニア人が主人公。現地のアフリカ人とインドからの移民の間にある壁についても勉強になったし、東アフリカの現代史も初めて知ることばかり。もちろん、文学的にも優れた作品だと思います。2018/01/20
EnJoeToh
7
素晴らしい。2014/08/19
AR読書記録
5
最近は国家・国民・国境って何だろう(定義じゃなく歴史とか意味とかね)と考えてしまうことが多いのだけれど、こういうものを読むとその思いがより強くなるわけです。ここにあるインド人なり、また華僑なり他の人々でも、昔から生まれた地にとらわれず(もちろん積極的に出た人もいればやむをえず脱出を選ぶ人もいて、位相は様々なのだけれど)移動し新たに根を下ろしてきた広大な「世界」が、ちまちまと分割され、人々がお互いいがみ合い差別し合うような状態にあるのは必然あるいは自然なことなのか。歴史のただの通過点であってほしいけど。2024/05/01
ソウ
3
すばらしい。イギリスの植民支配の少年期から独立後の成年期までの、白人でもなく先住黒人でもない、一人のインド系ケニア人を描いた壮大な物語。「お前が受け取らくても、誰かほかのやつが受け取ることになる・・腐敗とは、それが全面的なものであっても、曖昧さのうちに少しずつ進行していくものだ・・」「私に言わせれば世界とはそういうもので、・・この世界を変えるのは私の役目ではなかった。したがって私は倫理的判断を避け続けてきた・・」生きて行くということはやり過ごすということだわ。自分のナイーブさといったら。2018/06/25
Mark.jr
2
アフリカを舞台にした小説というと、大抵黒人が主人公になるわけですが。本作は、インド系つまり黄色人種が主人公でアフリカが舞台という珍しい作品です。もっとも珍しいと書きましたが、インドと東アフリカの繋がり歴史は長く、本書舞台のケニアもインド系の人は決して珍しくないらしいです(知ったように書いてますが、このような事実を自分は本書を読むまで全く知りませんでした)。そういった複雑な背景のタイトル通り"狭間の世界"に焦点を当てつつ、厚みのある物語を構成した、優れた作品です。2021/01/10
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