内容説明
華麗な水上都市ヴェネツィアの歴史は、内海に浮かぶ自らの自然条件を守る闘いの歴史でもあった。外海の浸食、自然災害、河川の流入による土砂の堆積、そして人間の無秩序な活動が引き起こす破壊―。中世以来、一つの共同体としての自覚に立ち、長期的な展望をもって環境の保全に人知を結集させてきた稀有な都市の歴史をたどる。現在の地球環境問題にも大きな示唆を与える一冊。
目次
1章 脅威にさらされる都市
2章 希少な資源、再生産可能な財
3章 技術、制度、法律
4章 ラグーナへの河川の流入を制限する
5章 衰退
6章 ヴェネツィアを救え
著者等紹介
ベヴィラックワ,ピエロ[ベヴィラックワ,ピエロ][Bevilacqua,Piero]
1944年生まれ。イタリア農業史・環境史。現在、ローマ大学(ラ・サピエンツァ)文学部教授
北村暁夫[キタムラアケオ]
1959年生まれ。東京大学大学院人文科学研究科修士課程修了。イタリア近現代史。現在、日本女子大学教授(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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Uzundk
2
ヴェネツィアをとり囲むラグーナ(内海)はその当初から、堆積する砂で海が後退し陸地化していく自然の力が働いていた。その力を制御し、海がある利点を取り入れ、海があることによる災害を抑制し、類い希ならグーなという環境を維持するために大きな努力が為されてきたことの歴史を追う。河川をかえる、堤防を築く、養殖を統制し、私的な干拓を摘発し、海路の浚渫を行う。14世紀からヴェネツィアを生かすために小さなものから大規模な工事までが真剣に議論され実践されてきたことが分かる。良い環境とは手放しで得られるものでは無いのだ。2015/12/07
Koki Miyachi
0
海に浮かぶ共同体として孤高の存在としてあり続けたヴェネツィア。その歴史は水との戦いであった。海からの水の脅威、川から流入する土砂、人間活動が引き起こす災いの数々。そして近年は地球環境の変質による危機。自然、科学、社会環境など多面的で詳細な解説は、専門的な見地からは優れたものなのだろう。しかし一般向けの科学書としては、詳細過ぎるディテールが読み易さをスポイルしているように思う。もう少し要旨を簡潔に分かり易くすれば、違った意味で価値ある本になると思う。2013/12/13
良坊
0
非常に読みずらい本でした。きっとそれはこの本がヴェネツィア周辺の地理を知っている人が読むことを前提にしているためではないかと思います。初めてヴェネツィアについての本を読む私にとっては文章に出てくる地名の位置付けがわかるような解説図が必要でした。そのフラストレーションで、せっかくの内容が十分には読み込めていないような気がしています。2012/03/02